3月28日、スポーツ界を横断して削減に取り組むプロジェクト「HEROs PLEDGE」の発表会に参加した。

「HEROs PLEDGE」は、地球規模で広がっている海洋ごみ問題や気候変動といった環境問題に対して、その原因のひとつである使い捨てプラスチックごみをなくしていくために、スポーツ界を横断して削減に取り組むプロジェクトだ。

私はこのプロジェクトに賛同させていただき、発起人である競泳のオリンピアン井本直歩子さんはじめとするアスリートと共に本格的に環境問題に対して取り組んでいくことを宣言した。

3月28日に開催されたスポーツ界を横断して削減に取り組むプロジェクト「HEROs PLEDGE」の発表会
3月28日に開催されたスポーツ界を横断して削減に取り組むプロジェクト「HEROs PLEDGE」の発表会

私がプラスチックごみに関して危機感を覚えた事柄が2つある。

まず1つ目は、何度かこのコラムにも書いたが、私自身、2016年頃から海に入ると湿疹ができることがあり悩まされていた。海や川などを主戦場とするトライアスロン選手にとって致命的な症状で、前日の試泳の際には翌日のレースに響かないように細心の注意を払っていた。そして、レース後にはレースウエアの部分に湿疹ができてしまい、睡眠にも影響があるほどだった。パッチテストやアレルギー検査をしたが原因不明。1年以上通院した結果、海の微生物や海洋汚染が原因によるものと診断された。海に流れ込む生活排水やプラスチックごみがレースウエアに付着し、湿疹ができてしまっていたのだ。

3月28日に開催されたスポーツ界を横断して削減に取り組むプロジェクト「HEROs PLEDGE」の発表会
3月28日に開催されたスポーツ界を横断して削減に取り組むプロジェクト「HEROs PLEDGE」の発表会

正直、それまではペットボトルは便利だな、とか、コンビニに行けばレジ袋を使うのが「当たり前」だった。しかし、これを機に、便利が当たり前になっている中で知らず知らずのうちに環境が破壊されていることを痛感した。実際、海を守っているライフセーバーの方も20年前まではビンや缶のごみが波打ち際に流れてきていたが、今は目には見えにくいプラスチックの破片が非常に多いという話しも聞いた。

2つ目は、海外のアスリートからのひと言に気付かされたことがあった。海外のアスリートからすると、日本の文化や建造物、街並みや情けに厚い人柄はとても人気だ。しかし、あるアスリートからこんな質問をされたことがある。

「どうして日本はこんなにプラスチックが多いの?このバナナやみかんまで袋に入っている。オランダやヨーロッパではこういう光景はないわ」

このひと言でも私たちにとっての当たり前は海外からしたら異例のことなのだと感じた。

銚子アリーナでのビーチクリーンの様子
銚子アリーナでのビーチクリーンの様子

トライアスロンは自然環境と共存するスポーツだ。『もしかするとトライアスロンができなくなる未来がくるのかも』。大げさかもしれないがそう考えるとことも増えた。

実際に、ワールドトライアスロン(国際トライアスロン連合)が定める、トライアスロン実施における規定の中では、水質や気候、気温、水温における規定がある。その規定をクリアしなければトライアスロンが実施されず、キャンセルまたはデュアスロン競技(ラン、バイク、ラン)に変更されたり、気温や水温の状態では距離が短縮されたりしている。選手の安全が第一の競技であるので、その規定には間違いはないが、近い将来、トライアスロンができる場所が限られてしまうのではないかという危機感もつのる。

このことから、まずは身近でできることからのアクションを共有したいと思う。

<1>マイボトル、マイバックの持参をする。

これは今からすぐにでもできることだ。私は何種類か持っていて、その時々の用途やファッションに応じて変えている。最近の趣味にもなりつつある。

<2>洗濯の回数を減らす。

こちらも以前コラムに書いたが、海洋汚染の原因でもある生活排水を少しでも減らす取り組みだ。ほんの少しのことだとは思うが、このほんの少しを広めていくことも大切だと感じている。

銚子アリーナでのビーチクリーンの様子
銚子アリーナでのビーチクリーンの様子

次に、スポーツ界においてのアクションとして、トライアスロン大会におけるマイボトルを広めていけたら良いなと考えている。

トライアスロンやマラソンといえば給水は必須である。参加者の安全のためにも欠かせないことではある一方で、大量のごみを出してしまう。そこで、湘南国際マラソン大会ではマイボトルを推奨し開催した。これを元に、今年9月に新潟県佐渡島で行われる佐渡国際トライアスロン大会では導入される予定だ。この取り組みはトライアスロン界に変化をもたらすに違いない。

そして今年のパリオリンピックでは競技場へのペットボトルの持ち込みが原則禁止、マラソンの給水所では再利用可能なカップを使用することなどが計画されており、史上初めて“使い捨てプラスチックのない大会”として注目されている。

取り組みをはじめることで、すべての人が賛同するとは限らない。『当たり前のことが当たり前でなくなる』には、時間や理解が要するかもしれない。それでも、はじめの一歩を踏み出し、今の当たり前ではないことを当たり前にする必要があると思う。

このコラムに目を向けてくださった方の中で、ひとりでも多くの方がこのプロジェクトに興味を持ってくれたらうれしい。(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン日本代表)