【ヤマコウ・輪界見聞録】

 先日の福井G3は脇本雄太の3度目の地元G3優勝で幕を閉じた。表のMVPが脇本なら、裏のMVPは野原雅也だ。「とにかく先行で」という雅也は前を取ってどの選手が後方から押さえに来ても、すべて突っ張る戦法を取った。北津留翼は、その気合に負けていったん動いたものの後方に追いやられた。そこから番手有利に運んで脇本V。福井勢の結束は、負傷で長期欠場している市田佳寿浩にもエールを送る形となった。

 福井競輪で解説をしている雅也の父、哲也さん(51期・引退)も息子の活躍に辛口なこと言いつつも、連日目を細めていた。有名選手の2世に付いて回るのが父親と比較されること。私も2世だが、おやじは無名の選手だったので比較されるつらさは分からない。

 しかし、雅也や今回参加している竹内公亮(父・竹内久人さん)や坂本貴史(父・坂本勉さん)はこの気持ちがよく分かるという。特に高校時代から自転車競技で活躍した貴史は、比較されることが多かった。それを乗り越えて、今、再び輝こうとしている。一発狙いの運任せの選手から、自ら運を呼び込む選手に変貌しようとしているのだ。

 福井を走った雅也は、2予で村上義弘と一緒になり、早めの先行で村上1着、雅也は3着に粘った。これで一皮むけたかのような準決の走り。今後に期待を持たせた。今回の貴史も新山響平の活躍で走りが変わってきた。あとは結果が出るまで今の走りを貫けるかどうかに懸かっていると思う。

(日刊スポーツ評論家・山口幸二)