ガールズ・グランプリ(GP)前夜祭が19日、東京の京王プラザホテルで、華やかに開催された。個別に取材できる機会があり、何人かの選手に話を聞くことができた。中でも、2年ぶりに出場する坂口楓華(26=愛知)の、GPに懸ける熱い思いに、心が揺さぶられた。

ガールズグランプリ2023の前夜祭に晴れ着姿で登場した坂口楓華
ガールズグランプリ2023の前夜祭に晴れ着姿で登場した坂口楓華

坂口は2年前の静岡ガールズGPに初出場し、結果は4位。「私は何もやっていません。記憶には残っているけど、ただ人の後ろに付いているだけだった」。最後の直線で伸び、確定板まであとわずかに迫ったが、それは爪痕ではなかった。続けた言葉に実感がこもる。「(当時は)強い選手の後ろに入ったとしても差せなかった。もう、それをしてると勝てないんだと……。2年前のGPで、そう思ったんです」。

それ以来、常に自力を出して勝負するスタイルに変えた。22年は優勝10度、44勝を挙げたが、賞金額の高いビッグレースの出場がわずか1回で、GP出場を逃してしまう。皮肉にも、そこでは坂口より1期下だが同年齢の柳原真緒が優勝を飾ることになる。「同い年の選手が優勝したのは、すごく刺激になりました。私も頑張れば、そこに行ける、と。強く信じて、ここまでやってこれた」。出場こそならなかったが、再びGPが坂口の闘志に火をつけた。

11月から愛知支部に所属する坂口だが、その前は京都支部の所属。頻繁に隣県の福井まで足を運び、柳原の師匠でもある市田佳寿浩氏から指導を受けるようになった。その成果は如実に表れ、今年はここまで優勝18度、65勝の戦績。さらにビッグレースには4度出場し、競輪祭とパールカップでは決勝戦進出を果たしている。「ようやくビッグレースで力勝負できるようになった。私にとって、ようやくスタートラインに立てた、そんな感じです」と充実感を漂わせる。

ガールズグランプリ2023の会見で笑顔を見せる左から坂口楓華、吉川美穂、尾方真生、梅川風子
ガールズグランプリ2023の会見で笑顔を見せる左から坂口楓華、吉川美穂、尾方真生、梅川風子

インタビューの終わり、坂口に「趣味はなんですか?」と質問した。返ってきた言葉は、「自転車、ケイリンです」と、間髪入れず返ってきた。聞けば、前夜祭前日(18日)まで、市田氏の下、福井でトレーニングを積んでいた。寒波の影響で、福井県も雪に見舞われていることを考慮し、「(車の)タイヤがスタッドレスではなかったんで、自転車を担ぎながら、電車に乗って福井から移動してきました」と、平然と答える。「女子で輪行(りんこう=自転車を分解し専用の袋に入れて持ち運びながらの移動)は、私も聞いたことないですね」と、あっけらかんと笑った。

選考順位はラスト7番目である。だが今年は、はっきりとした爪痕を、立川バンクにしっかりと残す、そんな気がしてならない。【鈴木豊】