エースとしてU-20W杯に臨む。ジュビロ磐田FW小川航基(19)は、そんな姿を数年前まで想像もしていなかった。「状況が少し違えば、年代別代表があることも(U-20)W杯があることも知らなかったと思う」。チームをけん引する点取り屋は、決してエリート街道を歩んできたわけではない。

 小学6年時に横浜港北SCのチームメート5~6人と地元・神奈川の強豪クラブのセレクションを受けた。しかし、小川1人だけが1次試験で不合格。桐光学園1年時までは国体の神奈川代表の選考会にすら呼ばれなかった。「大学に行くと思っていた。当時は『目標はプロ』という言葉も心の底から言えなかった」。2年時にU-18日本代表に初招集され、3年時の全国高校選手権で「NO・1ストライカー」として注目されるまで、プロという夢を明確に意識できなかった。

 16年の磐田入団後も苦しんだ。開幕スタメンを公言した1年目、公式戦出場は3試合。1本のシュートも打てなかった。「自分の中で一番の挫折。とにかく悔しかった」。名波監督と連日の居残り練習でスキルを高め今季は4月のルヴァン杯東京戦でプロ初得点を含むハットトリック。名波監督が「シュートのバリエーションは高原(直泰)より多い」と評価する才能が2年目で開花しつつある。

 小川の語り口にも自信がこもる。「ジュビロで活躍して、東京五輪出場。A代表にも入って、いずれは海外でプレーしたい。今は、はっきり目標が言える。そのためにもこのW杯で結果を残したい」。描く未来像へ、確かな1歩を刻む。【前田和哉】(おわり)

 ◆小川航基(おがわ・こうき)1997年(平9)8月8日、横浜市生まれ。大豆戸ジュニアユースから桐光学園を経て16年に磐田入団。昨年10月U-19アジア選手権は3得点で、初優勝でのU-20W杯出場権獲得に貢献。リーグ戦は通算5試合無得点。183センチ、77キロ。