サッカー日本代表に初招集されたブルガリア1部ベロエ・スタラザゴラのMF加藤恒平(27)が「生きてて良かった」と喜んだ。26日、明日28日から東京近郊で始まる合宿に向けて羽田空港に帰国した。J1所属経験はなく、海外を渡り歩いた苦労人は、約40人の報道陣に囲まれて戸惑いつつ、W杯アジア最終予選イラク戦(6月13日、テヘラン)など今後に向けて堂々と決意表明した。

 MF加藤は「今、生きてて良かった」と笑った。立命館大時代に渡ったアルゼンチンでは死を覚悟したことがあるという。連敗したアウェー戦の直後のロッカー室に「パンッ、パンッ」と銃声が響いた。怒ったサポーターのボス的な2人が猟銃を持って押しかけていた。上に向けて放ったとはいえ、乾いた音は忘れられない。金銭も奪われた。そんな経験のある日本代表はおそらく初めてだ。

 初めて航空機のビジネスクラスで帰国。「足を伸ばせました。お酒は一切飲まないんですけれど、食事はおいしかった」と初々しかった。J1所属経験はない。月給300ユーロ(約3万7500円)だったモンテネグロのクラブなど東欧で活躍し、ハリルホジッチ監督の目に留まった。「代表に入ることで新しい道を作りたいと思っていた。日本でダメでも海外に行く選択肢もある。ここからがスタート。もっと高いところに上れるよう努力したい」と使命感に燃えた。

 来月7日の親善試合シリア戦(味スタ)を経て、13日には大一番のイラク戦を迎える。「代表の選手はビッグクラブでプレーしていて技術レベルが高い。その中でどれくらいできるか。ボールを奪う守備が、攻撃やカウンターの起点になれればいい。1回きりにならないこと。もちろんW杯のピッチに立ちたい」。悪条件ピッチのイラク戦こそ、悪環境での経験が生きる。持ち味は球際の激しい争い「デュエル」だ。【鎌田直秀】