<W杯アジア3次予選:日本3-0タイ>◇14日◇2組◇バンコク、ラジャマンガラ・スタジアム

 司令塔・中村俊輔(29=セルティック)が、サッカー人生初の痛み止め注射を打ってタイ戦に出場し、勝利を演出した。前半23分、MF遠藤保仁(28)にショートコーナーのサインを出し、DF闘莉王(27)の先制点の起点になった。2列目の右MFで出場したが、ボランチの位置まで下がって攻撃に強弱をつけるなど、3-0の圧勝劇をプロデュースした。

 不思議な感覚だった。中村俊は、4歳でサッカーボールに接してから、初めて痛み止め注射を打ってピッチに立った。オマーン戦(7日)で古傷の右足首痛を再発させ、この日になっても痛みは消えなかった。「大事な試合だから、絶対に出たかった」と、注射を打った上、患部をぐるぐる巻きでしっかり固定。キックオフ前、違和感があるのか、何度も右足で芝を蹴って感触を確かめた。

 中村俊

 痛いけど、やれるもんだね。足はなんにも感じなかった。面白いもんだね。いい経験ができた。ハーフタイムに監督から「いけるか?」と聞かれて「平気です」と言ったけど、後半に注射(の効能)が切れることは知っていた。後半は痛みが出てきたけれど、代わったのは監督の判断。

 痛みを経験の蓄積でカバーした。2列目の右MFに入ったが、好調のボランチ遠藤を再三前に行かせ、自分は下がり気味で攻撃陣をバックアップした。前半23分には遠藤へ、ショートコーナーを指示し、貴重な先制点を生んだ。「前半、セットで点が取れたから、少しは楽になった」と、後半25分に中村憲と交代するまで、ピッチ上のプロデューサーとなり、完勝劇を演出した。

 22日にはホームでバーレーン戦が組まれている。アウェーで0-1で負けた相手だ。中村俊は、リーグの日程などで招集されず、スコットランドで日本の敗戦を伝えられた。「ケガ次第だけど、僕はアウェーに出てないんで、個人的には絶対出て借りを返したい」。負けを引きずったまま、最終予選に臨むことは避けたい。リーダーとして、チームに自信をもたらすためにも、必勝を誓った。

 00年2月13日のシンガポール戦で代表デビューし、この日でキャップ数は77を数える。目標の1つだった中田英寿氏の記録に並んだ。「僕はプレー面で常に上を目指しているし、代表に呼ばれることは、それが評価されているということだから、代表へのこだわりはあるよ」。「ヒデ超え」が実現するバーレーン戦は、勝利へのプロデュースだけでなく、自ら先頭に立って勝利を奪い取る。