<キリンチャレンジ杯:日本2-1グアテマラ>◇7日◇長居

 日本代表GK楢崎正剛(34=名古屋)がグアテマラ戦(長居)を最後に日本代表から退くと表明した。前半に1点を失い、完封はならなかったが、事実上の代表引退マッチを白星で飾った。

 楢崎は、10人のサムライを従え、キャプテンマークを巻いて入場し、いつもの「仕事場」に立った。前半22分に1点を失ったが、その後は的確な指示と無駄のない動きで相手を封じる。後半35分には強烈なミドルシュートを右に横っ跳びして好セーブした。

 今回の合宿序盤に、代行監督を務める原技術委員長と会談した。その席で、今後の招集リストから外してほしいと、重い決断を伝えていた。試合後には自らの言葉で説明した。

 楢崎

 4回W杯に出て、二十歳から代表を経験できたのは幸運なこと。いろんな経験をさせてもらって感謝している。何かで恩返しができないかと思っていた。今まで、ボクがしてきた経験を、多くの選手が体験するべき。そういう気持ちで決めました。

 足かけ15年、20歳からずっとプレーで貢献を続けてきた。集大成と決めた4度目のW杯を終え、自らが身を引くことで後に続くGKたちにチャンスを与えたい-。プレーしないことも、代表への貢献につながると思って決めた。最後は前に出ること、目立つことを嫌う楢崎らしい決断だった。

 「力が衰えたとか、そういう実感はまったくない」と言う。代表への思いも熱いままだ。試合終了直後には、勝ったにもかかわらずピッチ中央でFW岡崎をつかまえ、身ぶり手ぶりを交えてCKの守備を指導した。生まれ故郷の関西で区切りの試合を迎えられたのも幸せだった。大仕事に区切りを付けた名手は、大きな楢崎コールにそっと右手を上げただけで、静かに代表の魂を仲間に託した。【八反誠】