アウェーは大歓迎!

 イラク代表のジーコ監督(59)が、大観衆で埋まる埼玉スタジアムでの日本代表戦を待望した。10日の公式会見で「選手はサポーターの影響は受けない」と自信を見せた。もともとイラクは政情不安でホームで試合ができず、選手たちもアウェーの戦いを勝ち上がってきた強い自負がある。日本代表監督時代に7勝2分けと験のよかった会場で、今度はイラクを勝利へ導く。

 かつて日本代表監督としてサムライブルーを率いて、7勝2分けと無敵を誇った埼玉スタジアムに、ジーコ監督が帰ってきた。

 前日の予告通り、約1時間の公式練習を報道陣に完全公開。ジーコ監督は、練習開始早々セットプレーの練習を始めると、自らFK役を務め、何度もボールを蹴り上げた。鹿島などでの現役時代は、数々の芸術的FK弾を決めた名手。照明の光に照らされながら、時折声を張り上げて、59歳の体を躍動させた。

 06年のW杯ドイツ大会に出場し、日本国民に愛された「神様ジーコ」。今回は敵国の指揮官として、埼玉スタジアムの日本サポーターの前で指揮を執る。ジーコ監督にとっては完全アウェーの立場だが、ひるむことはない。

 ジーコ監督

 このチームはいつもホームでプレーできていない。中国でも熱烈な相手サポーターがいたが、勝つことができた。サポーターの影響は受けない。

 昨年10月に中国・深センで行われたアジア3次予選中国戦。2万人収容の会場に2万5021人が詰め掛けた。その試合で、イラクはFWユーニスのゴールで1-0で勝利。試合後は怒った中国人サポーターが中国選手を軟禁状態にするなど、イラクにとっては完全アウェーの一戦で勝利を手にしていた。

 03年に始まったイラク戦争以降、宗教対立などで国内の治安は悪化。国内ではホーム試合を開催できない状況だ。今年2月に中立地カタールで行った3次予選シンガポール戦では、味方サポーターは950人。それでも、その試合も7-1で大勝した。ジーコ監督は「イラクの選手は苦労を強いられてきたので意志が強い。彼らは困難が大きいほど克服する力を持つ」とも話していた。

 今日11日も、6万人以上の超満員の大観衆が予想される。ジーコ監督は苦難を乗り越えてきたイラク戦士の誇りを胸に、日本に挑む。「最後まであきらめず、100%の力を出すこと。奇策をする必要もない。いかに試合に集中し、私の指導を守るかで、結果は生まれる」。さまざまな思いの詰まった一戦を、悠然と構えた。【由本裕貴】