浦和MF関根貴大(21)が、激痛走る負傷箇所でのパスで、値千金の決勝点をアシストした。同点で迎えた後半終了間際。カウンター攻撃の場面でパスを受け、左サイドから仕掛けると、迫る2人のDFの間に右足つま先で軽く浮かせたパス。これがきれいに抜け、さらにニアサイドで相手選手を引きつけたMF李がスルー。後方のFW興梠が左足で押し込んだ。

 「駆け引きがうまくいった。自陣で奪って攻めて、敵陣で取られて、攻められてまた取り返してというオープンな展開。直前に守備に戻るか戻らないか迷っていたのですが、みんなを信じて前に残っていました。それがいい形につながった。最初はワンツーから自分でシュートを打とうと思っていたのですが、結果としてゴールにつながってよかった」

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 実はパスを出した右足つま先には、深い傷が残っていた。15日のルヴァン杯決勝G大阪戦で、右足の母趾のツメを一部はがした。そのまま120分を走りきったが、試合後にスパイクを脱ぐと、ソックスは血に染まっていた。

 やがて出血は止まったが、残ったツメの下にたまって圧迫し、強い痛みを生んだ。そのためツメに穴を空け、注射針でたまった血を吸い出す治療をした。それで練習を続けることができたが、新潟戦前日の21日朝、再び痛みが強まった。

 全体練習開始直前。周囲の選手とともに、ピッチ横でスパイクを履こうとしたが、つま先が腫れた右足を通すことができなかった。痛みに表情をゆがめながら、何とか履いたが、とても走れる状態ではなかった。

 スタッフのすすめもあって、ランニングシューズに履き替え、全体練習への参加は断念した。しかし、ペトロビッチ監督にはこう言った。「明日は必ずやります」。

 痛みの原因は、ツメの下にたまったうみだった。試合に出るなら、やるしかない。再び注射針を挿入し、うみを吸い出した。激痛が走るのは分かっていた。それでも試合に出たかった。

 PK戦にまでもつれる激戦のルヴァン杯決勝でケガをしたのは、関根だけではなかった。MF宇賀神が左足首を負傷し、新潟戦も欠場することが決まっていた。司令塔のMF柏木も足首を捻挫し、出場が難しかった。

 関根は「捻挫や肉離れなら、仕方ないとある意味あきらめもつきますけど、僕のは言ってみれば痛いだけですからね」と苦笑いする。悲願の年間優勝へ、落とせない大事な試合。試合当日、もう1度うみを抜き、痛み止めも施してピッチに立った。

 「でも、最初から痛かったです」。それでも攻撃時は果敢な突破を仕掛け、守備に回れば自陣深くまで駆け戻り、相手選手に全身をぶつけて制した。そして最後には、痛む右つま先で浮かせたパスで、劇的な決勝弾を演出した。

 主力を欠き、心身の疲れも色濃く残る新潟戦は、苦しい戦いになった。昨季までならドロー、もしくは逆転負けに終わる展開だが、しぶとく勝ち点3をもぎ取った。

 今年の浦和はやはり違う。見る者にそう思わせた裏には、痛みお構いなしの献身があった。