<J1:名古屋1-1京都>◇第1節◇8日◇豊田スタジアム

 柳沢はん、決めて~な~。今季J1に復帰した京都が開幕戦で名古屋と1-1で引き分けた。アウェーで勝ち点1を獲得したが、新加入の元日本代表FW柳沢敦(30)は後半ロスタイムにGKと1対1の決定機に外し、悔しい「京都デビュー」となった。

 試合終了を告げるホイッスルが鳴ると、がっくり腰を下ろして下を向いた。普段は冷静な柳沢が右手でピッチをたたき、感情をむき出しにした。後半ロスタイム、FW田原のパスを受けてフリーになった。GKと1対1。決めれば勝ち越しゴール。だが、左足シュートはクロスバーを大きく越えた。名古屋に駆けつけた京都サポーターからため息がもれる。「決めるところは決めないといけない」。自分への怒りを抑え、冷静に振り返った。

 結果としては及第点とも言えるアウェーでの勝ち点1。だが、満足できるはずもない。先制点は奪ったが前半は内容で圧倒され、柳沢もほとんどボールに触れなかった。後半3分に最初のシュートを打ち、少しずつリズムをつかむ。だが、最後の最後に訪れた絶好のチャンスをものにできなかった。加藤監督は「やってやろうという気持ちが強かったのかな」とかばったが、本人は「ビッグチャンスを逃したのは悔しい」と遠くを見つめた。

 慣れ親しんだ鹿島から京都移籍を決断したのは「自分を変えたい」という思いからだった。京都が強豪クラブを目指すという考えにも賛同した。自分への期待、開幕戦の重要さも分かっていたからこそ体が硬くなった。「チームが勝てば、自分が別に決めなくてもいい」という信念を持つが、この日ばかりはFWとしての責任を果たせなかった悔しさが募った。

 ほろ苦い京都デビューとなったが、チャンスをつくる形はできている。FW田原は「ゴールまであと1歩だった」と柳沢とのコンビに手応えをつかんだ。加藤監督は「次のホームで決めてくれるでしょう」と期待した。次節は16日大宮戦(西京極)。「1週間、しっかり練習して課題を修正したい」。新エースのゴールは、ホーム初戦にとっておいたと考えればいい。【奈島宏樹】