<世界陸上>◇17日◇女子棒高跳び決勝◇ベルリン五輪スタジアム

 後がない3度目の跳躍になっても、全身からあふれ出る本来のエネルギーは感じられなかった。3連覇を狙ったエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が「記録なし」に終わった。五輪でも2連覇中。強敵のスタチンスキ(米国)が故障で欠場し、優勝が確実視された女王が、1度もバーを越える姿を見せられなかった。

 跳び始めは4メートル75。ほかの選手たちが低い高さで競技を開始すると、タオルを頭からかぶるいつものスタイルで精神集中した。「体調は良かったし、すべて完ぺきだった」。しかし1回目は体が浮かずに失敗。4メートル80に上げた2度の跳躍は、いずれも腹のあたりで触れてバーを落とした。敗北が決まると、マットに座り込んで両手でしばらく顔を覆った。

 屋外で14度の世界記録を樹立し、5メートル05まで伸ばしている27歳の第一人者にとって、「記録なし」は18歳で出場したシドニー五輪で予選落ちして以来という。「説明がつかない。こういうこともあるとしか言いようがない」と首をひねった。

 7月下旬のロンドン・グランプリで4メートル68の低調な記録で2位に終わった。だが、この時は踏み切りで使う左ひざを痛めていたという。「ひざは治って万全だった。輝かしい未来のための教訓にするしかない」と強気の姿勢を崩さなかったが、イシンバエワ時代に陰りが差した。