プレーオフ最終戦のツアー選手権。3日目に5連続バーディーを奪取するなど圧巻のプレーでタイガー・ウッズ(42=米国)が復活優勝を遂げた。そんなタイガーの次なる舞台は、米国選抜と欧州選抜がぶつかるライダーカップ(9月28~30日)だ。


●5人もいる副キャプテンの役割


タイガーが復活した。しかも今シーズンのツアー最終戦という大舞台で、初日から首位を譲らずの完全優勝だ。なんだかこれまでうまくいかなかったことすべては、この優勝のためのストーリーの一部でしかなかったかのように見える、“らしい復活劇”だったと思う。

そんなタイガーの次戦は米国選抜として挑むライダーカップだ。2年に1度、米国と欧州で交互に開催地を変えて行われ、今年はフランス・パリでの開催となる。前回大会の2016年に取材をしたが、ギャラリーの熱狂ぶりはゴルフ観戦の価値観を崩壊させるほど。メジャーをはるかにしのぐ熱量だと感じた。そこに今回の復活したタイガーが選手として参戦する。メジャー最終戦で見せた好調ぶりを維持し、若手のメンバーを引っ張っていけるかに注目が集まる。

ところでタイガーはツアー欠場中だった2016年の前回大会にも、米国選抜として参加をしている。しかしこのときはプレーヤーとしてではなく、副キャプテンとしての選出だった。今回の大会でもデビッド・デュバルやザック・ジョンソンなど、そうそうたる面々が副キャプテンとして名を連ねている。


(米国選抜の副キャプテン)

デビット・デュバル

ザック・ジョンソン

マット・クーチャー

デービス・ラブIII

スティーブ・ストリッカー


(欧州選抜の副キャプテン)

ルーク・ドナルド

パドレグ・ハリントン

ロバート・カールソン

グレアム・マクドウェル

リー・ウエストウッド


両チーム合わせて10人の副キャプテンがいるが、彼らは実際にプレーをするわけではない。

主な役割は練習ラウンド時はコース攻略などにでアドバイスを行ったり、メンタル的なサポートだ。そして本番ではカートに乗ってゲームをチェックし、チーム内に共有する。選手の調子を間近で確認し、その後のペアリングなどの材料としているのだ。

ライダーカップでは午前午後で相手の出方も考えながらペアリングや順番を決めるため、この副キャプテンの役割は戦略上、かなり重要になる。役割も多岐にわたるため、1チームに5人もの副キャプテンが選ばれているというわけだ。

前回大会で副キャプテンを務めた米国選抜のタイガー・ウッズとバッバ・ワトソン、欧州選抜のイアン・ポールターは副主将としてライダーカップに参加した経験をプレーヤーとして生かすことができるだろう。


●コーチも熱を帯びる


このように副キャプテンはチームを勝たせるためのマネジメントを主に行うが、スイングの技術的なチェックなどは、シーズン中同様に各選手のコーチが行う。シーズンオフとは言え、国の威信を背負っての戦いとなるため、コーチたちも熱を帯びる。

前回中、ダニー・ウィレットのコーチとして現地にいたピート・コーウェンはウィレットの調子が上がらず欧州チームが劣勢ということもあり、疲れた顔で「ダニーの調子が悪くてさ」とかなり歯がゆそうな様子だった。

ライダーカップは、ギャラリーの応援がとにかく強烈なためホームとアウェーでは全く状況が異なる。ジャスティン・トーマスやブライソン・デシャンボーなど初出場組が雰囲気にどれだけのまれずにプレーできるかがカギになりそうだ。

個人的にはマッチプレーに強い、イアン・ポールターなど経験の多い選手がいる欧州選抜が有利だと思っている。


◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。欧米のゴルフ先進国にて米PGAツアー選手を指導する80人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を直接学び研究活動を行っている。書籍「ロジカル・パッティング」(実業之日本社)では欧米パッティングコーチの最新メソッドを紹介している。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)