イ・ボミが勝った。開幕戦5位、その後4戦連続2位があって、6位、3位…。いつ勝ってもおかしない状況から、今季10戦目で、ついにというか、やっとというか。「す~ごい、うれしいです」と無邪気に喜ぶ姿に「ほんま、かわいいなあ…」とデレ~っとなってしもたが、もう1人、無邪気に…ではなく心底喜んどる人がいた。

 「このタイミングで勝ててほんまよかったですわ。この流れを逃してたら、やばかった思います」-。

 帯同キャディーの清水重憲氏(40)である。

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 賞金ランク1位を走るボミちゃんの清水キャディーへの信頼は、すごい。ラウンド後に話を聞くと「キャディーの清水さんが…」と口にする回数が、まあ多い。あんなかわいい子の横で仕事しとるだけでも腹立つのに、頼られやがって…。

 おまけに「プロゴルファーも知らない優勝請負人キャディーのシークレット・メモ」なる本まで出しとる。数年前まで弊紙関西版で、彼のコラム「雨でも晴れでも担いでます」を数年連載しとったんやが、中身が段違いにおもろい。「あんなおもろいネタあるんなら、なんで書かへんかってん!」と毒づきたくなるが、それもあとの祭りや。「よ! 文豪キャディー」と冷やかしたったけど、ほんまにチクショウ…。

 話がそれた。元に戻そ。

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 今年のボミちゃんは、パットが入る。部門別ランクの「平均パット数」を見ていくと、一目瞭然です。

 12年、5位。

 13年、5位。

 14年、16位。

 今季、1位。

 「ドライバー・イズ・ショー。パット・イズ・マネー」いう格言がある。プロの勝ち負けは、最終的にパットが入るか、入らんかで決まる。入れば強い。だから、今年のボミちゃんは強いわけやが、その陰に清水氏の存在がある。またまた、ちょっと腹立つけど、これは間違いない。

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 清水氏によると今季4戦目、3月のアクサレディースのころに、2人でパットのルーティンについて話し合ったらしい。

 「要は『構えたら、すぐ打つ』いうことで、それをするようになって、入り出したと思います。昨年の映像と見比べてもろたら、はっきり違いがわかると思いますけど、極端に言えば以前、長い時で4~5秒かかってたんが、今は1秒かかってへんのちゃいますか」

 ライン読みにかける時間は変わってへん。でも、アドレスに入って、構えたら、すぐ打つ。固まって、手が動きにくくならんうちに、描いたイメージが消えんうちに-。そういうことらしい。

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 最初は田中秀道のキャディーやった。1998年、茨城・大洗GCの日本オープンで優勝した時も担いでたけど、ようしかられとった。その後は頑固者の谷口徹、職人かたぎの平塚哲二…。女子では谷口と同時期に上田桃子の主戦キャディーも務めて「同一年の男女賞金王キャディー」っちゅう離れ業も演じた。

 厳しいプロの下でキャディーのイロハを学んだ。だから、たとえバッグを担ぐプロが年下でも、絶対に失礼な態度は取らん。プロは雇用主という認識を崩さへん。勘違いをせん。出しゃばらへん。それでいて、クラブ選択、ライン読みなど、プロに聞かれた時の備えは欠かさへん-。

 ありゃ? いつの間にか、ほめてもうとる。

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 「僕もいろんなプロに勉強させてもらいましたから、助言できることはあります。ボミちゃんはほんまに素直な子。自分が納得できることは、実行に移してくれるんです。やりがいありますわ」

 清水重憲、40歳。今回の優勝が男女合わせて25勝目。大溝雅教キャディー、森本真祐キャディーの勝ち星に並んだ。能力、実績ともトップクラスなんは、間違いない。ほんまもんのプロキャディー。ちょっとやけるけど。【加藤裕一】