あなたの街のプロゴルファー、タケ小山(52)がお届けする毎週火曜日の「タケ小山のゴルフ即効薬~今週の処方箋」第4回は、「パットのラインはこうして読め!」。


デザイナーは地形を生かしてコースを造る


 日本のトッププレーヤーが集合しているはずのツアーでも、パットを打った後でも首をかしげているシーンを目にすることありますよね。特に目立つのは富士桜CC(山梨)が舞台のフジサンケイクラシックや太平洋クラブ御殿場C(静岡)の三井住友VISA太平洋マスターズあたりでしょうか。一体どうしてでしょう?

 答えはどちらも富士山の近くにあるコースだから。そのホールの形状ばかりにとらわれていると、ラインを読み間違ってしまいがちなんです。人工的に造ったホールの傾斜を読むのは易しくても、常に全体が頭に入っていないと、男子プロでさえ、うまくラインが読めないものなのです。

 「富士山は今、どっちにあるかな?」「六甲山は?」などと、いつも感じながらプレーしましょう。ラインを読むには、ボールとカップの関係以外にも読むところがあるんです。グリーンのスピード、芝目、傾斜、風、それに加えて全体の形状。ねっ! たくさんあるでしょ? 広い視野を持ちましょう。

 「富士山から順目」とか「●●に向かって順目」などとキャディーさんが言うコースあるでしょう? 傾斜を逆にボールが上っていってしまうように感じるラインのあるコース。あれも、全体の地形が分かっていれば決して不自然なことではないんです。山岳コースは分かりやすいですね。全体としてどちらが山側にあって、どちらが谷側にあるかを最初に分かっておく。河川敷コースなら川の上流、下流を、海の近いコースなら海岸線がどこにあるのか知っておくこと。実はこれ、すごく大切なんです。ナビのおかげで地図を見ることも少なくなりましたが、事前にコースの置かれた場所を頭に入れておきたいものです。

グリーンに向かっているときに地形をよく見る
グリーンに向かっているときに地形をよく見る
ザ・インペリアルCC
ザ・インペリアルCC

水の流れを考慮


 もし、自分がコースデザイナーだったら、できるだけ土地の地形を生かしてコースを設計するでしょう? お金にものを言わせて、やたらに重機を入れて造ったコース(設計者がいいかげんと言い換えてもいいかな)もないとは言いませんが、基本的には土地の地形はコースに生きているものなんです。芝の育成に大切な水の流れを考えても、その必要がありますからね。だから山から谷へ、山から海へ、上流から下流へと芝目が向くものなんです。

 これに各ホールの傾斜や芝目、スピードや風などを加えた複合的な要素からラインを読みます。ボールが傾斜を逆に上っていくように見えるのは、コース全体から考えれば不思議でも何でもないというわけです。

 コース全体の地形を頭に入れた上で、グリーンに向かっていくときにそのホールの地形をよく見ることも大切です。グリーンに上がってからいくらうろうろしても、自分の立っている場所だから錯覚しやすいですからね。地球の上に立っているのに、地球が丸いって分からないのと同じことです。それだけの事前準備をしてから、そのホールの細かいことをチェックする。ラインというのはこうやって読むんです。

 ラインを読むのがうまい人は、こうした情報分析を常にしているんですね。風向きも同じように、コース全体で把握しておくと分かりやすいですよ。


今週の処方箋

「ラインは最後まで読み切れ」

 【服用法】地図を見てからコースに行く。コースに行く途中も地形をチェック。情報すべてを駆使してラインを読むのがコツ。

ラインは最後まで読み切れ
ラインは最後まで読み切れ

 ◆タケ小山(こやま)本名・小山武明。1964年(昭39)7月7日、東京都生まれ。中大卒業後、プロゴルファーを目指して89年に渡米し、フロリダ州のゴルフ場所属プロとなる。米、カナダ、オーストラリア、アジアなどのツアーでプレー。07年に帰国し、日本ツアーに参戦。08年に早大大学院でスポーツマネジメントを学ぶ。ザ・ゴルフチャンネル、ゴルフネットワークなどでのトーナメント解説には定評がある。TBS系「サンデーモーニング」の「屋根裏のプロゴルファー」として知られる。InterFMの「Green Jacket」(土曜午前5~8時)、文化放送の「The News Masters TOKYO」(月~金曜午前7~9時)などに出演。


取材・構成 遠藤淳子(清流舎)

撮影 山崎安昭

協力 ザ・インペリアルCC(茨城県稲敷市)