<米男子ゴルフ:全英オープン>◇初日◇16日◇英・ターンベリー(7204ヤード、パー70)

 【ターンベリー=木村有三】遼くんが、ウッズに勝った!

 今季メジャー第3戦の全英オープンが開幕。石川遼(17=パナソニック)が、初めてタイガー・ウッズ(33=米国)と同組で回り、2アンダーの68をマーク。71に終わった世界王者を3打上回った。ウッズは3度しか使わなかったドライバーを9度も使用。日本人最年少の全英出場で、持ち味の攻撃的ゴルフを見せて5バーディーを奪い、メジャー初の予選通過を視界にとらえた。

 晴れやかな表情で、石川がウッズに歩み寄った。2アンダーの68で終えた18番グリーン。71だった世界王者に、3打勝った。握手を交わす。「100点はあげられないけど、90点以上はあげていい。ブッシュに入った時も最小限のロスで済んだし、ティーショットの大曲がりは1度もなかったので、回りやすかった」。満足感にあふれていた。

 あこがれのヒーローとの初対決。スタートは手足が震えた。「足もだけど、ティーの上にボールを乗せるときも、手が震えて難しかった」。ドライバーではなく、ハウスキャディーのマッカランさんから手渡された3番アイアンを全力で振りきった。球は右セミラフに入ったが、パー発進。2番で2メートルを沈めてバーディーを先行させた。「最初は緊張したけど1番のパー、2番のバーディーが大きかった。パットも最後までいいストロークができた」。無難な立ち上がりで、平常心を取り戻した。

 ゴルフを始めた6歳のころ、一気に世界の頂点へと駆け上がったのがウッズだった。97年マスターズ優勝後も攻めて勝ちまくる姿に、あこがれた。父勝美氏が録画したスイングのビデオも何度も見た。心のヒーローと、世界最高峰の舞台で巡ってきた初マッチ。13番後はウッズから歩み寄り「日本での優勝おめでとう」と祝福され、笑い合った。

 「すべてがかっこいい。それしか思わなかった」。スコアでは“勝利”したが、ゴルフは4日間勝負。石川には勝った自覚など、少しもない。「あらためて格が違うなと感じましたね。今日はタイガーのティーショットが安定してなかったけど、それでも違うな、と。『今日のところはこんなとこだろ』って感じでやってる。余裕が違う」。

 控えめな言葉とは対照的に、プレーでは攻める姿勢を示した。深いラフやバンカーが待ち受けるリンクスに対し、ウッズは3度しか握らなかったドライバーを9度も握った。「アグレッシブにいこうと」。フェアウエーには1度も行かなかったが、深いラフまで曲げたのは1度だけ。奪ったバーディーも5個。「今日は、ほとんどいいんじゃないですか」と納得した。

 68は自身米ツアー初日ではベストスコア。日本選手の全英の初日としては、96年田中秀道らに次ぐ好スコアだ。メジャー2戦目で、初の予選通過が見えてきた。「今日は風も吹いてないし、吹いてからが全英。明日もプレーのリズムを乱さず、やれればチャンスはかなり高くなる」。ウッズとの同組も2日目は2度目。スタートから平常心で、初の決勝の舞台を狙っていく。