総合家電メーカーのパナソニック(本社・大阪府門真市)が、08年から結んでいたプロゴルファー石川遼(21)との所属契約を今季限りで解消する方針を固めたことが12日、分かった。業績悪化に伴う経営合理化の一環で、丸5年での撤退となる。08年から続けてきた男子ツアーのパナソニックオープンも、来季を最後に打ち切る方向で最終調整していることが判明。既に女子バドミントン部と男子バスケットボール部を今季限りで休部することを決めた同社だが、スポーツ部門縮小の波はゴルフ界にも及んできた。

 業績悪化に苦しむパナソニックが、スポーツ界で国内トップクラスの人気を誇る石川遼も手放すことになった。プロ転向直後の08年1月28日から5年間の所属契約を結んでいたが、来年2月以降の契約更新をしない方針を固めた。

 パナソニックは、10月末に今期の連結業績予想を大幅に下方修正。最終損益を500億円の黒字から7650億円の赤字に引き下げた。7700億円を超える赤字だった昨年度に続く業績不振。津賀一宏社長が会見で「我々は負け組になっていると言わざるを得ない」「普通の会社ではない」と発言するほど、経営状態は厳しい。

 株主配当は63年ぶりに無配となり、スポーツ事業では女子バドミントン部と男子バスケットボール部を今季限りで休部することを発表した。そんな中、ゴルフだけが例外になることはなかった。08年1月当時は高校1年生だった石川と、5年5億円(推定)という破格の条件で所属契約を結び後方支援してきたが、内外で加速するリストラの流れを止められなかった。

 石川サイドでは、同社の事情を考慮して、ほぼ無償の〝恩返し契約〟も想定していたが、それも難しい状況となった。石川の父勝美氏はこの日、契約解消について明言しなかったが「パナソニックさんに5年間育ててもらった。サポートがあったから、ツアーで10勝できた。永久に感謝の気持ちは持ち続けたい」と話した。今後経営状況が好転した場合も想定し「パナソニックは世界的な企業ですから。選ばれる選手でありたいですね」と、将来的な再契約への思いも語った。

 08年からアジア太平洋ゴルフ連盟、日本ゴルフ協会との共催で開催してきたパナソニックオープンも来年限りで打ち切る方向になった。日本ゴルフツアー機構(JGTO)は6日に来季日程を発表したばかりだが、この時期に「来季限りで終了」の方針が固まるのは極めて異例。国内開催が過去最低の23試合に減少して厳しい状況に陥っているJGTOにとっても、有力大会の消滅はショッキングなニュースになる。

 ◆パナソニックのスポーツ支援

 88年カルガリー冬季五輪から国際オリンピック委員会(IOC)と公式スポンサー契約を結び、映像音響機器カテゴリーの公式パートナーとして五輪を支援している。IOCとの契約は16年リオ五輪まで残る。スポンサー活動は石川遼との所属契約、男子ツアーのパナソニックオープン主催の他、JリーグのG大阪と契約。企業スポーツは野球部、バレーボール部、男子バスケットボール部、ラグビー部、女子バドミントン部が活動してきたが、今年10月にバスケットボール部とバドミントン部の休部が発表された。

 ◆パナソニックオープン

 08年に新設され、日本ゴルフ協会、アジア太平洋ゴルフ連盟、パナソニックが主催する。アジア太平洋地域のプロとアマのトップクラスが出場し、同地域のNO・1を決める大会と位置づけられている。日本ツアーだけでなく、アジアンツアーの賞金加算対象となっており、毎年、両ツアーからトップ選手が集結している。12年の賞金総額は1億5000万円、優勝賞金は3000万円。開催コースは近畿地方を巡回して開催されており、12年は兵庫・東広野GCが会場となった。