単なる“タラレバ”でないことは、最終日のプレーが証明している。第3ラウンド後半から本来の切れ味を取り戻したアイアンショットはピンに絡み続けた。特に後半は圧巻。パー5の13、15番ではいずれも8番アイアンで2オンに成功して2パットバーディー。17番も残り152ヤードから1・2メートルにつけて今大会初めてアンダーパーまで伸ばした。「3日目の後半と今日でこれだけいいショットが打てたので、そこは自信を持って…」。週末のオーガスタをねじ伏せたショットへの手応えは確かにあった。

 他の試合に出る時も、オーガスタ攻略が念頭にあった。3週間前のアーノルド・パーマー招待。スタート前の練習には決まって2本の3番ウッドを持ち込んだ。その試合では18ホールで1、2度しか使わないクラブ。外見はほぼ同じ、スコアライン(クラブフェースに刻まれた溝)の入り方と、重量調節機能があるかないかが違う市販品とツアープロ仕様を入念に打ち比べた。易しさを重視し、選んだのは市販品のタイプ。今大会、主に第1打で3番ウッドを使った難関10番は第2ラウンドから3日連続バーディー。入念な準備が実を結ぶ瞬間も確かにあった。

 「応急処置できるレベルではない」と切り捨てたパット。「それが実力なんで。調子の谷間とかあると思いますけど、それがないようにやっていけたら」と受け止めた大一番にピークを合わせる難しさ。高みを見据えて反省は尽きないが、この1カ月について「(後悔は)ないです」と即答できる積み重ねをしてきた。

 これまで以上の希望を託され、臨んだ6度目のオーガスタ。「期待されているとしたら、応えられなくてすいませんという感じです」と頭を下げた。残る今季3試合のメジャー、そして1年後のマスターズ…。夢は間違いなくつながっている。【亀山泰宏】