史上3人目のツアー競技のプロデビュー戦優勝へ、大型ルーキーの河本力(22=フリー)が4アンダー、67で好発進した。

プロ初日を終え、河本の言葉はシンプルだった。

「お仕事になったので、生きていくためには稼がなきゃいけない。大人の攻め方を考えて、リスクマネジメントを心がけていきたいです」

プロ1年目にして、ツアー1の飛ばし屋だ。日体大生だった20-21年シーズン、ツアーでのドライビング・ディスタンス318・92ヤードは出場8戦24ラウンドの参考記録ながら、部門別1位幡地隆寛の313・04ヤードを上回る。そんな怪物がブレーキを踏みながら、プレーした。

パー3を除く14ホールでドライバーは8回握ったが、頭にあるのは「我慢」の2文字。4番パー5の第2打はピンまで200ヤード強、楽勝で2オンを狙える状況から、池を警戒してウエッジで刻んだ。最終9番は1・5メートルのパーパットを決めた。「(狙いで)カップを外さないといけないほどのスライスライン。あそこが1番大事だったかな」。4バーディーより、ボギーなしで終えた自分に満足そうだ。

アマチュアで何度も苦汁を飲んだ。20年日本オープンは1位で予選通過して、5位。昨年9月パナソニックオープンは第2ラウンドで単独首位に浮上した直後、パー5で第1打をロストし「9」。大会を20位で終えた。「このオフに昨年の反省をした時に、気持ちでスコアを崩してると思った。前のめりになって、優勝した過ぎて、必要ない攻めをして…」。パナソニックオープンでは日体大の1年後輩で、来週のマスターズに出場する中島啓太が優勝。「啓太がいいプレーをするし、焦ってしまって…。啓太は僕より大人でした」と振り返る。

パッティングコーチの橋本真和氏に1年前から習っているが、昨秋のプロ転向を機に本腰を入れた。「打ち方がひどかった」というパットを、テンポを中心に気をつけて修正。アドレスもグリップも変えた。爽快感に直結するショットより、スコアメークの肝を鍛え直した。

今大会は主催者推薦で出場した。QTランク74位のため、プロ1年目の主戦場は下部ABEMAツアーになる。目標は「アベマで3勝」。達成すれば、昨季の久常涼と同じルートで、残りのツアーにフル参戦できる。さらに全米オープン出場。今大会の成績次第で現在748位の世界ランクが500位以内へ、すると5月23日の日本地区予選に出場できる。

「上を目指すなら、自分に厳しくないとダメ」。プロ転向を前に、女子プロの姉結にハッパをかけられた。「1年間、大人のゴルフをしたいです。今大会は1日3アンダーを4日続けたい」。破格の飛ばし屋が残り3日も心のマネジメントを徹底する。