<米男子ゴルフ:アーノルド・パーマー招待>◇最終日◇29日(日本時間30日)◇米フロリダ州ベイヒル・クラブ(7137ヤード、パー70)◇賞金総額600万ドル(約5億7000万円)優勝108万ドル(約1億260万円)

 【オーランド=木村有三】タイガー・ウッズ(33=米国)が、左ひざ手術明け3戦目で劇的な復活を遂げた。ショーン・オヘア(26)と並ぶ首位で迎えた18番パー4で、5メートルのバーディーパットを沈めて勝利をもぎとった。67で通算5アンダーの275で、米ツアー自己タイの5打差逆転で大会2連覇、昨年6月全米オープン以来9カ月ぶりのツアー通算66勝目を挙げた。4月9日開幕の今季メジャー初戦マスターズ(オーガスタ・ナショナルGC)へ、世界王者らしさがよみがえった。今田竜二(32)は7打差の17位に終わった。

 握り締めた右手を振り回した。右足も蹴り上げ、ウッズがほえた。日没も過ぎた午後7時51分。夕闇迫る18番グリーンに、復活の雄たけびが響いた。「グレートな気分だ。やっと戦いの場に戻ってこられた。日曜日のバックナインの熱気を感じることができた」。

 首位オヘアと5打差と、常識的には厳しい位置からのスタートだった。2、3番の連続バーディーで2打差に詰め寄り、重圧をかけた。終盤は世界ランク1位の勝負強さが全開だ。14番ではバンカーショットがピンを4メートルオーバーするピンチで、パーパットをねじ込んだ。15番は8メートルのバーディーパットを沈める。16番では残り111ヤードから華麗なフックスピンで、カップ横80センチにピタリと寄せてパーセーブした。

 そして、オヘアと並んで迎えた18番、5メートルの上りのバーディーパットを入れて決着。プレーオフなら翌日に持ち越された可能性もあり、「それは嫌だったからね」とニヤリと笑った。

 米ツアーで5打差をひっくり返したのは、00年AT&Tペブルビーチ以来。当時は出場6試合連続優勝と絶好調で、同年はメジャー3勝を含む自己最多の米ツアー年間9勝を挙げ、全英オープンでグランドスラムを達成した。今回は9年前のように力でねじ伏せるだけでなく、好パットや風へ対応するショットなど、円熟味を増した33歳らしい勝ち方だった。左ひざの完治と自身最長となる約8カ月の「休養期間」でリセット。ウッズの「新黄金時代」の幕開けともいえる。

 昨年6月全米オープン優勝後に競技を離れ、フルショットの練習を再開したのは今年1月だ。「当時はすべてのクラブを打てなかった。それを考えれば(復活は)少し早かったかな」。2月8日に第2子の長男チャーリー・アクセルちゃんが誕生。今回の会場は自宅から車で約10分の距離で、愛息の顔を毎日見届けられたことも活力になった。

 復帰わずか3戦目、マスターズを控えての勝利に自信は膨らむ。「今、考えているのはオーガスタに向けて、前に進み続けることだけ」。次の獲物は5着目のグリーンジャケットだ。心も技も体も、態勢は整った。この勝利がライバルたちに、重圧をかけるのは間違いない。ウッズが名実ともに世界最強王者として、オーガスタに乗り込んでいく。