<米男子ゴルフ:マスターズ>◇最終日◇10日◇米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7435ヤード、パー72)◇賞金総額800万ドル(約6億4000万円)優勝144万ドル(約1億1520万円)

 アマチュアの松山英樹(19=東北福祉大2年)が74で回り、通算1アンダーの27位と健闘し、日本人初のローアマ(ベストアマ)を獲得した。母校のある東北地方など被災地に向け「少しでも希望と喜びを与えられた」とスピーチし、周囲の協力に感謝した。シャール・シュワーツェル(26=南アフリカ)が、通算14アンダーでメジャー初優勝を飾った。

 夢に見た光景だった。表彰式で、前年優勝者ミケルソンが、今年の勝者シュワーツェルにグリーンジャケットを手渡す。その横に、松山が立った。日本人アマとして初出場した大舞台で、ローアマを獲得。その証しの「銀杯」を手に、19歳はスピーチした。

 松山

 まだまだ被災地は大変ではありますが、マスターズのプレーが、少しでも希望と喜びを与えられたと思います。オーガスタのみなさんに、感謝します。

 通訳を介して日本語で話した松山に、取り囲んだパトロンの拍手が注がれた。

 予選通過したアマは1人だけで、2日前から受賞は確定していたが、やはり格別だった。「試合より緊張したっす。表彰式は、遼より先でしたね。スコアは負けたけど」と笑った。“主役”のシュワーツェルを見て「グリーンジャケットを着たいなあと思いました。日本のスーパーで安い緑の偽物を買って、着るっス」。銀杯に刻まれた名前には、重みを感じた。60年ニクラウス、91年ミケルソン、95年ウッズ。新たに「MATSUYAMA」と刻まれる。「(銀杯は)軽かったけど、それにない重さがある」。身が引き締まった。

 東日本大震災で被害を受けた仙台の大学に通う身として、出場は直前まで迷った。後押ししてくれた知人らのメールを500通以上もコピーして、ファイルに束ねてオーガスタまで持ってきた。レンタルハウスに帰ると、読み返す日々。勇気を与えるはずが、逆に勇気をもらった。「被災者の応援メッセージがなかったら、ここには出られてなかった」と感謝した。

 この日は18番で2メートルを沈めてバーディー。27位で終えると、2日連続で公式会見に呼ばれた。最終日も、世界のプロに負けないプレーを見せた。100%の力を出したかと聞かれると「200くらい出したんじゃないですか」。被災者に背中を押され、持てる力を出し尽くした松山が、胸を張って4日間を締めくくった。【木村有三】