<女子ゴルフ:フジサンケイレディス>◇最終日◇24日◇静岡・川奈ホテルGC富士C(6464ヤード、パー72)◇賞金総額8000万円(優勝1440万円)

 金田久美子(21=レプロエンタテインメント)が涙のツアー初優勝を飾った。5打差8位から出た最終日はプロ転向後のベストスコアタイの66をマーク。通算5アンダー211で、2日目まで首位だった昨季賞金女王アン・ソンジュ(韓国)らを逆転した。8歳で世界ジュニアに優勝し、小学生時代からプロツアーでも活躍。プロデビューの09年から優勝を期待されたが、予選落ちが続き、シード権も逃した。一時はゴルフを辞めることも考えた元天才少女が挫折を乗り越え、今季3試合目で結果を出した。

 プロ転向後、初めての喜びの涙だった。プロ3年目の21歳。平成生まれでは3人目の快挙も、金田にとっては長い道のりだった。11歳11カ月で史上最年少ツアーデビューした元天才少女。以来、アマ時代を含め計94試合目で頂点にたどりついた。「正直、自分の中では時間がかかった。もっと早くいけるなと思っていました」と待ちわびたツアー初優勝を振り返った。

 昨季賞金女王アンと5打差8位で迎えた最終日。1番で残り110ヤードの2打目をピン2メートルにつけバーディーを奪うと勢いに乗る。下りの8メートルを沈めた3番から3連続バーディーと猛チャージ。アンら上位陣がスコアを落とし、13番で首位に立っても動じない。15番では「入れなきゃではなく、入ると。ラインもビシッと見えた」と5メートルのバーディーパットを難なく沈め、優勝を確実にした。

 ジュニア時代から数々の記録を塗り替えた。プロデビューの09年から早期優勝を期待されたが。開幕から4戦連続予選落ちなど結果は出ない。「自信があっただけに、うまくいかず落ち込んだ」。終盤はゴルフ場に着くだけで涙が出た。「このままゴルフをやっていいのかと何度も思った。本当に地獄だった」と当時を思い出して唇を震わせた。

 支えは父弘吉さん(67)の存在だった。3歳から二人三脚でスパルタ教育を受けた。小学6年で両親は離婚。反抗期も重なり、練習をサボり、夜遊びをする日々もあった。「うざい」「うっとうしい」と何度も衝突したが、父から見放されることはなかった。プロで結果が出ないときは、一緒に悩み、励ましてくれた。「自分のために小さいときから頑張ってくれた。勝って恩返しが夢だった。こんなところであきらめてはだめ」と、折れそうな心を奮い立たせた。

 2季ぶりにツアーフル参戦の決まった今季前は2月からハワイ、沖縄、米サンディエゴと50日以上の長期合宿を自分で組んだ。石川遼と同じ仲田健トレーナー(41)の指導で、体重は2年前から7キロ増の53・5キロ。平均飛距離も20ヤード伸びた。周囲には「うまいとか、クミのいいところだけを言って」とマイナス思考を排除。伸び伸びと感覚でプレーしたアマチュア時代の自分を必死で呼び戻した。

 天才少女と呼ばれたころの感覚は完全によみがえった。まだ3試合目だが獲得賞金1799万円は賞金ランク1位。「1勝だけで満足せず、2勝、3勝と上を見て戦いたい」。ミニスカートにへそピアスと、時には奔放さの話題が先行した異色のギャルファーが、これから日本の頂点を目指す。【田口潤】