<男子ゴルフ:中日クラウンズ>◇2日目◇29日◇愛知・名古屋GC和合C(6545ヤード、パー70)賞金総額1億2000万円(優勝2400万円)

 ゴルフ界も仙台の力を見せた。仙台で生まれ育った岩田寛(30=フリー)が1イーグル、4バーディー、ノーボギーの64で回り、通算9アンダーで首位に立った。課題だったショートパットで集中力を高め、安定感が格段に向上。プロ初優勝に前進した。東北福祉大の後輩、池田勇太(25=日清食品)も2打差の2位につけた。

 13番パー3。岩田は7番アイアンで、ピン手前50センチにつけた。いつもは「お先」の一声とともに、ラインも読まず簡単に打っていた距離。だがこの日はマークをしてボールを拾い、ラインを読んだ後、慎重にバーディーパットを沈めた。

 これまでは勝負どころでミスが出た。08年つるやオープンでは首位だった最終日の残り2ホールで連続ダブルボギー。同年フジサンケイクラシックのプレーオフでは1メートルのバーディーパットを外し、優勝を逃した。

 前日18番でもダブルボギー。ホールアウト後、新岡キャディーに準備の大切さを説かれ、「気持ちも逃げている。わざと簡単に打って外れたときの言い訳をつくっている」と注意された。

 集中力が増した理由には、被災した故郷仙台のこともある。3月11日は合宿地沖縄から仙台へ空路移動したが、仙台空港に着陸直前、地震と津波の危険から引き返した。その直後、大津波が仙台空港をのみ込んだ。空港に駐車していた愛車も流された。

 「優勝争いでテレビに映って、被災者のみなさんに見てもらいたい」。帰路は1カ月ぶり復旧の中部空港発、仙台空港行きの便。あの日降り立つことができなかった空港に、ツアー初優勝の栄冠を携えて戻るつもりだ。【塩畑大輔】