<女子ゴルフ:フンドーキンレディース>◇最終日◇15日◇福岡センチュリーGC(6482ヤード、パー72)◇賞金総額8000万円(優勝賞金1440万円)

 佐伯三貴(26=日立アプライアンス)が東北福祉大OB・OG勢に、東日本大震災後初のツアー優勝をもたらした。4バーディー、2ボギーの2アンダー70で回り、通算8アンダー208でツアー3勝目。終盤の相次ぐピンチを、得意のパットと「東北の人たちの後押し」という神懸かり的なリカバリーショットでしのいだ。石川遼のレッスンを受けた大江香織(21)が通算2アンダー214で、今季ベストの13位に入った。

 見えない後押しで、絶望のふちからはい上がった。16番パー5。佐伯はティーショットを右に曲げた。カート道上のボールは、規則上無罰で道の右にドロップできたが、やぶが迫り動かせる場所がない。「このまま打つ」。アスファルト上で8番アイアンを握り、運を天に任せ振り抜くと、クリーンヒットしたボールは、ピンまで残り150ヤードの好位置まで転がった。「東北の人たちが助けてくれたとしか思えない」。優勝を決定づけるバーディーにつながった。

 東北福祉大出身。「東北の人たちを勇気づける活躍を」と言い続けてきた。しかし他のOB・OG同様、思いが強すぎ、ツアー再開戦の西陣レディスでは予選落ち。「復興には時間がかかるのだから、私たちも長いスパンで活躍を見てもらわないと、と考えを変えた」。最近2戦は3位、2位と成績を伸ばしてきた。

 「後半は東北のために勝ちたいという気持ちが強まった」。重圧の中、15番では4メートルの下りパーパットを残すなど、ピンチが続く。しかし毎ラウンド後、2メートルのパットを4方向から3本ずつ、計12本続けて入れるまでやめないなど、自分に重圧をかけた練習の成果が出た。13日の初日終了後には福岡ヤフードームで野球観戦したが、この練習が終わらず球場入りは3回終了後。ストイックな努力の成果でパーを拾い続けた。

 バーディー1つにつき、1万円の義援金も送っている。「金額じゃない。大事なのは気持ち」。佐伯が東北福祉大を代表し、やや遅くなった「春一番」を東北に届けた。【塩畑大輔】