<高校総体:競泳>◇18日◇岩手・盛岡市立総合プール

 男子自由形に、新星が誕生した。200メートルで、セントメリーズ(東京)のムーディー・ケリー(3年)が初優勝を飾った。カナダ人の父と日本人の母を持つインターナショナルスクールの水泳部員が、1分50秒98で制した。本格的な強化をしてから半年で、一気にブレーク。カナダと日本の国籍を持つが、生まれ育った日本を代表しての五輪出場に意欲を見せた。

 ラスト20メートル、ムーディーの体がグイッと前に出た。2位以下を頭1つリードすると、そのままゴール。勝利を確認すると、両手を上げてスタンドの歓声に応えた。前日の400メートルは終盤逆転されて2位。テレビのインタビューに「前半余裕で入り、ラストで勝負するつもりだった。作戦通り」と胸を張って答えた。

 記者席では、ざわめきが起きた。「本名?」「どこの国の選手?」。全国大会初優勝、スポーツでは無名のインターナショナルスクール所属。「お父さんはカナダ人で、お母さんが日本人。国籍は両方持っています」と本人が解説した。

 父デービッドさん(54)は同校の体育教師で、水泳部の顧問。小さい時から水泳には親しんだが「趣味程度だった」とムーディーは言う。「日本と違って、複数のスポーツをするのが普通」だったからだ。練習は1日1時間強、土曜の午後と日曜は休み。「練習も自分で考える。父に強制されたことはない」と話した。

 しかし、昨夏の高校総体同種目で4位に入り「本気で取り組みたくなった」。以前から夏場に通っていたNECグリーンSCでの練習を増やし、6月にはフロリダ大に短期留学。7月の世界選手権(中国・上海)の5冠ロクテ(米国)から「できると信じれば、必ずできる」と激励された。186センチ、77キロの恵まれた体とカナダ五輪選考会に出場した父譲りの競泳センスで、半年前に目標にした優勝を達成。「去年の決勝は周りがすごい人たちに思えた。すごい人に勝ちたいと思ったら、今年は自分がすごい人になれた」。

 お笑い芸人のムーディ勝山を連想されて「少し前までは、スタート前にスタンドから笑いが起きた」と話した。しかし、これで名前も全国区。卒業後は米国の強豪大学で水泳を続け、日本代表入りを目指すつもりだ。「全国をとったので、次は世界を狙いたい」。もちろん、一発屋で終わるつもりはない。【荻島弘一】

 ◆ムーディー・ケリー

 1993年(平5)12月7日、東京生まれ。幼稚園からセントメリーに通い、水泳は6歳で始めた。中学まではテニス、剣道、野球などもこなしたが、その後水泳に専念。09年春のジュニアオリンピック(JO)ではスペイン、ブラジル、米国など多国籍の同校チームで400メートルリレー銀、10年春は銅メダルを獲得した。