<F1:アブダビGP>◇1日◇決勝◇ヤスマリーナ・サーキット◇1周5・554キロ×55周

 トヨタの小林可夢偉(23)がデビュー2戦目となった今季最終戦で、6位に入賞した。12番手スタートだったが燃料を多く積み、他の選手よりピットストップを1回少なくする作戦が的中。ミスなく戦略通り走り切る冷静さも見せ、来季のフル参戦へ大きくアピールした。日本勢の2戦目での6位は、87年の中嶋悟、08年の中嶋一貴親子に並ぶ最高位。レッドブルのセバスチャン・ベッテル(22=ドイツ)が今季4度目、通算5度目の優勝。ウィリアムズで最後の出走となった中嶋一貴は13位だった。

 代打出走の小林がチャンスを見事にものにした。正ドライバーのグロックの負傷欠場で巡ってきた2度目の本戦出場。ピットストップ1回というチーム戦略を冷静に実行する。バトン、ライコネンら年間総合王者経験者を追い越すアグレッシブさとともに、タイヤの消耗をセーブする頭脳的走りも見せた。「レース前に入賞すると言っていたのでポイントが取れて良かった。1ストップ作戦で見えない敵(他車のピットストップ後の想定順位)と戦いながら、自分のペースでミスなく走れたのが良かった。出来は70点」と喜んだ。

 F1界では中嶋悟、一貴親子も2戦目で6位入賞しているが、ともにシーズン序盤だった。他のドライバーがマシンを習熟している最終戦で、ほぼぶっつけ本番での入賞は大きな価値がある。

 トヨタの育成プログラムTDPの支援で16歳から欧州のレースでもまれてきた。言葉も分からない厳しい環境の中、着実に結果を出してきた。育成を担当するTDPの有松義紀氏は「失敗しても自分で問題を発見して乗り越えていく、どんな状況でも折れない鋼の心を磨かせた」という。控えドライバーの2年間、腐らずに勤め上げたことが、花開いた。

 ブラジルGPでの代打出走を発表した10月11日に山科忠代表は「可夢偉はずっとドライバーの候補ですよ」と明言していた。最後の最後で、来季の正ドライバー昇格に向けて、大きなアピールに成功した。(米家峰起通信員)