2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は1日、ベルギーの劇場ロゴに似ているとの指摘を受けるなど批判が高まっていた佐野研二郎氏(43)デザインの大会エンブレムを撤回することを決めた。新国立競技場(東京都新宿区)の建設計画に続き、大会のシンボルが相次いで見直される前代未聞の事態となった。既にエンブレムを使用しているスポンサー企業などへの影響も懸念され、組織委の責任が問われそうだ。

 組織委の森喜朗会長や遠藤利明五輪相、東京都の舛添要一知事ら、関係組織や団体のトップで構成する臨時の調整会議を開いて決定した。遠藤五輪相は「佐野研二郎氏本人から取り下げるという申し出があったので、臨時調整会議で了承した」と記者団に語った。

 組織委の武藤敏郎事務総長は同日、記者会見を開いて「国民に申し訳ない」と謝罪した。「国民の支援がないエンブレムを使い続けることは、大会を成功に導く考えにそぐわない」と説明し、今後について「直ちに新しいエンブレムの選考に入りたい。公募を大前提にしたい」と述べた。

 エンブレムは五輪開幕まで5年となった7月24日に東京都庁で発表された。ベルギーのリエージュ劇場のロゴを制作したデザイナーが「驚くほど似ている」と指摘し、劇場側が国際オリンピック委員会(IOC)に対し使用差し止めを求めて地元裁判所に提訴した。

 佐野氏はエンブレムについて「模倣は一切ない」と主張していたが、他の作品の模倣を認めたサントリービールのキャンペーン賞品だけでなく、同氏が関わった作品で似ているものがあるとの指摘が相次ぎ、大会のイメージダウンが危ぶまれていた。