北島康介(33=日本コカ・コーラ)は2分10秒16の全体3位で決勝進出を決めた。予選、準決勝と1日2本の200メートルを泳ぐのは4年前のロンドン五輪以来。予選は7位と出遅れたが、準決勝でタイムを上げ、今季自己ベストを出した。100メートルでは出場権を逃しているため、今日8日の200メートル決勝が5大会連続出場へのラストチャンス。水泳人生のすべてをぶつける。

 極限の集中力は健在だった。予選は7位。準決勝で9位以下なら、その時点で北島の五輪挑戦は終わる。後のない状況で、トップの19歳渡辺に0秒70差の3位に食い込む。33歳。電光掲示板を見て「あっぶね~」と漏らし、直後のインタビューでは「レベルたけ~。まじで」と息を切らしたが、何とか踏みとどまった。

 5日の100メートルでは派遣標準記録に0秒3届かず、五輪切符を逃した。若手の成長が著しい200メートル。厳しい展開になったが、数々の修羅場を通り抜けた金メダリストには、まだ楽しむ余裕があった。「怖さと緊張感があるから選考会。本当に僕はこのギャンブルが好きなんだな」。中1日で完全に気持ちを切り替え、独特の伸びのある泳ぎで若手に対抗した。

 ロンドン五輪後から昨年までは100メートル一本に絞ってきた。持久力が問われる200メートルの練習の強度は高い。腕、肘、膝と古傷を抱える33歳の肉体。負担は大きいが、最後の五輪挑戦に後悔は残したくない。100メートルにつなげるためにも、過酷な200メートルの練習に取り組んだ。

 週6日、平井氏が監督を務める東洋大で一回り下の萩野らと練習を続けた。昨年11月、今年2月にはスペイン合宿に参加。標高2300メートルと酸素の少ない高地で、何度もプールを往復した。呼吸は荒くなり、顔もゆがんだが、学生たちに刺激を受けながら、気力を振り絞る。独特の低抵抗の泳ぎにパワーを加えた、新境地に達して大会を迎えていた。

 五輪5大会連続出場のためには、今日8日の決勝で2分9秒54の派遣標準記録を突破し、2位以内に入らなければならない。「レガシーにならず、レジェンドのままでいてほしい」と平井コーチ。「もう1度、自分の意識と自信を取り戻させてくれた東洋大の学生と平井コーチには本当に感謝している。その思いを決勝にぶつけたい」。水泳人生最後の戦いに悔いは残さない。【田口潤】

 ◆競泳の五輪代表選考 個人種目は日本選手権の決勝で、日本水連が定める派遣標準記録を突破して2位以内に入れば代表に決まる。ただし女子200メートル平泳ぎは渡部が、同200メートルバタフライは星が昨年の世界選手権を制して既に代表に決まっており、残り1枠。100メートル自由形の4位までと、100メートル種目の優勝者はリレー代表の選考対象になる。