世界5位の錦織圭(26=日清食品)が、大会史上最長3時間20分の死闘の末に惜敗した。同1位の新王者マリー(英国)に、7-6、4-6、4-6で逆転負け。これで1勝1敗となり、現地時間18日に行われる1次リーグA組最終日に2年ぶりの準決勝進出をかける。日本時間18日午後11時以降にマリー-バブリンカ(スイス)、同19日午前5時以降に錦織-チリッチ(クロアチア)が行われ、マリーが勝つか、錦織が勝てば、錦織の準決勝進出が確定する。

 めくるめくドラマは果てしなく続いた。最終戦という大舞台。錦織とマリーという世界屈指のショットメーカーが繰り出すミラクルショットがネット上であらゆるところに飛び交った。敗れたとはいえ錦織は「どんどん近づいている。テニスの差はなくなってきた」。3時間20分の激闘はすでに世界最強と同レベルに達していることを証明した。

 第1セットだけで1時間26分の熱戦だった。特にタイブレークは合計20ポイントを戦い、攻防がめまぐるしく入れ替わった。錦織に5本、マリーに2本のセットポイントがあったが、最後は錦織が11-9でもぎ取った。惜しむらくは続く第2セットで最初のサービスゲームを失った。「あそこで耐えていれば展開は変わった」と振り返った。

 今季4度目の対戦で3度目のフルセット。3月の国別対抗戦デ杯で4時間54分、9月の全米準々決勝では3時間58分、ともに5セットを戦い、デ杯はマリー、全米は錦織と星を分けた。その死闘が世界上位8人が集まる今大会でも再現された。それだけに「もう少し自分がしっかりしていれば勝つチャンスがあった」と悔やんだ。

 世界最強相手にも勝たないと、もう満足などしない。手応えは感じたが、悔しさの方が上回った。「ここまで競っても負けは負け」。だからこそ、最終セット1-5となっても、決してあきらめてはいなかった。勝てる手応えを見つけていた。3ゲームを連取し追いすがる。そこに以前とは違う大きな成長を見せた。

 錦織は1勝1敗となり、A組はチリッチ以外の3人が、混戦となった。誰にも1位通過のチャンス、落選のピンチがある。「テニスは良くなっている。チャンスは全然ある」と2年ぶりの準決勝進出を視界にとらえる。マリーを追い詰めたフルセットが、錦織には有利に働くかもしれない。勝敗が3人並んだときはセット率、2人並んだ時は直接対決が優先。準決勝進出を争う当面の相手、バブリンカとは、どちらでも錦織が有利だ。【吉松忠弘】

 ◆マリーの話 体力的に厳しかった。彼とはいつもラリーが長くなり、マラソンのような耐久戦になる。将来的にもうこんな長い試合はしたくないね。

 ◆最長試合 テニスの男子ツアーを統括するATPによると、1次リーグA組の錦織-マリーは3時間20分に及び、10年の準決勝のナダル-マリーで記録された3時間12分を8分上回った。

 ◆試合方式 1次リーグはA、B組に4人ずつ分け、各組総当たり戦。各組上位2人が準決勝へ。リーグ順位は以下の順で決定。(1)勝ち星の数が多い選手 (2)総試合数が多い選手(棄権し2勝0敗と、3試合を戦い2勝1敗では後者が上位) (3)2人が同じ勝敗数の場合は対戦で勝った選手 (4)3人が同じ勝敗数の場合はセット奪取率、ゲーム奪取率が高い選手となる。すべて3セット試合でタイブレーク方式で行われる。