北京五輪開幕まで8日であと1カ月に迫った。柔道女子70キロ級代表の上野雅恵(29=三井住友海上)と同57キロ級代表の佐藤愛子(24=了徳寺学園職)の道産子コンビが、金メダル獲得へ共闘を誓った。7日、2人の母校旭川南高で行われた壮行会に出席。後輩からの激励にパワーをもらい、意欲を新たにした。メダルの期待がかかる2人に意気込みを聞いた。

 同郷、そして同じ柔道部というきずなが、何よりも心強かった。2人は7日、トレーニングの合間を縫って母校旭川南高で行われた壮行会にそろって参加。その後、高校3年間汗を流した道場に立ち寄り、思い出話に花を咲かせた。五輪開幕は来月8日に迫っているが、つかの間の帰郷を楽しんだ。

 全日本合宿でもよく話をする間柄。プレッシャーのかかる五輪ともなれば、お互いの存在が頼りになる。佐藤にとっては初めての五輪。「こういう機会もそうですが、雅恵先輩と一緒なのでうれしく思います」と感謝した。上野もかわいい後輩のため、過去3度五輪に出場した経験から積極的にアドバイスを送る。「愛ちゃんはしっかりしているから大丈夫。五輪だからといって大きくとらえないで、自分らしい柔道をすれば大丈夫」と太鼓判を押した。

 旭川南は68年メキシコ五輪レスリングの中田茂男氏、96年アトランタ五輪女子柔道の恵本裕子氏、前回アテネ五輪の上野と3人の金メダリストを輩出している。道場では恵本、上野の五輪での写真パネルを飾っている。佐藤は「歴代の先輩に習いたい。金メダルを取って道場に写真を飾りたい」と意欲を示した。これで壮行会などの事前イベントはほぼ終了。この日の旭川空港発の航空機で北海道を離れた。戦闘モードにスイッチを切り替えた2人は、金メダルスピリッツを受け継ぎ、北京に乗り込む。

 -北京まで、あと1カ月

 上野

 今は技づくり中心にやっています。速さ、力強さ、つなぎの工夫など流れの中で攻められるように。

 佐藤

 ケガもなく順調にきてます。周囲の盛り上がりほどでない、冷静な自分がいますね。

 -6月末の欧州合宿、7月の釧路町合宿と追い込みの合宿が続いたが

 上野

 欧州合宿は選手が多くなく、レベルは高くなかったですが、外国人の間合い、深さを体で覚えてこよう、と。釧路合宿は、やっぱり北海道が体にあっていると再認識しました。

 佐藤

 57キロ級も強豪はいなかったですが、まったく無駄というわけではなかった。投げるトレーニングにもなりましたし。

 -4年前のアテネとの違いは

 上野

 五輪は3回目ですが、やっぱり緊張します。前回の大会を思い出し、興奮して眠れないことも。でも、気持ちに余裕ができました。あせって、必要以上に不安になることはなくなった。アテネ後はいろんなことがありました。辛いこともあったけど、続けて良かったかどうかは、北京を終えてみないと分からない。ただ、小さなころから、やるのが当然、勝つための柔道が、厳しくて好きになれなかった。でも、アテネの後は柔道が好きになった。視野が広がりました。

 佐藤

 代表になれなかった4年前は52キロ級。当時は多いときで10キロ以上減量してましたし、大会も多かったので「拒食と過食」の繰り返しみたいな感じでした。柔道より先に減量が頭にあった。階級を上げてからは食べられないストレスがなくなったし、柔道だけに集中して追い込んだ練習ができる。試合、大会を通じて以前は「長いな」と感じましたが、今はそんなこともないですね。

 -故郷の応援もすごい

 上野

 地元の人たちが応援してくれているのは、東京にいても分かる。金メダルをとって、喜んでもらえたら。

 佐藤

 (旭川に柔道留学前に通った)名寄中名寄小は1年中、はだしの学校でした。土踏まずとか、少しは筋肉の付き方が違ったのかな、と。今でもはだしが大好きで、夏も冬もサンダル。練習も走るときは5本指ソックスです。

 -北京での目標は

 上野

 世界選手権の連覇はありますが、五輪は参加人数も注目度も違う。節目でもありますし、重みが違います。でも、連覇ということより、オリンピックという大会を制する、勝つことだけを考えています。

 佐藤

 金メダルですね、やっぱり。いろんな人から「五輪は特別」と言われるので、塚田先輩(真希=78キロ級代表、アテネ金)に聞いたら「扱いはVIPになるけど、あとは何も変わらない。それまでにやったことを、しっかり出せばいい」と言われて楽になりました。いつもと変わらないよう「マイ枕」を持参します。ホテルの枕は、なじめなくて…。低反発、ちょっと高かったんですが自分への投資と奮発しました。