<競泳:ジャパン・オープン>◇2日目◇6日◇東京辰巳国際水泳場

 入江陵介(19=近大)が悔し涙を流した。男子200メートル背泳ぎで1分54秒09で優勝したが、ライアン・ロクテ(米国)の世界記録1分53秒94に0秒15及ばず、前日の100メートルに続いて世界新記録はならなかった。5月の日豪対抗でロクテの記録を1秒以上上回るる1分52秒86をマークしたが、着用したデサント社の水着が国際水連に許可されず、記録は公認されていない。認可された水着で世界新を出して水着騒動に決着をつけるという目標は、世界選手権(7月26日開幕、ローマ)に持ち越しとなった。

 スタンドからの拍手が大きくなると、入江は次第に悔しさがこみ上げた。優勝タイムは公認されているロクテの世界記録に0秒15遅れた。会場は一瞬静まりかえったが、すぐに健闘をたたえる拍手に包まれた。「これだけ応援してもらい、何としても世界新を出したかったので残念です」。優勝者インタビューで入江は声を震わせた。会場裏に入るとたまらず号泣した。

 再び世界新記録を出して、水着騒動に決着をつけたかった。「世界記録を出せば周囲の目が水着から選手に向く」。この日は国際水連から認可された英スピード社のレーザー・レーサーを着用した。最初の50メートルは世界記録を上回るハイペースで突っ込んだ。前半100メートルはほぼ世界記録ペース。だが100~150メートルで失速した。

 大会直前までの代表合宿や、4月の日本選手権から続く連戦の疲れが残っていた。5月の日豪対抗で出した世界記録を上回る1分52秒86を再び出すことは難しいことは分かっていた。それでも「(1分)53秒台は出したかった」。ロクテの世界記録超えは狙っていた。「北島康介に次ぐ日本のエース」という期待に応えたかった。レース後は「康介さんがいなくなって水着問題も全部背負い込む形になり荷が重かった」と振り返った。

 それでも収穫はあった。ロクテの世界記録には4月の日本選手権が後半重視で0秒08差、今回が先行策で0秒15差。日本代表の平井ヘッドコーチは「どんな展開でも速いのはライバルにとっては脅威」と話す。入江も現在の心境を5位に終わった北京五輪と比較して「悔しいのは変わらないけど、ダラダラしていた北京の後と違って今は『やってやろう』という気持ち。世界選手権で世界新を出して金メダルを取る」と前を向いた。【高田文太】