<競泳:日本選手権>◇2日目◇14日◇東京・辰巳国際水泳場

 男子200メートル平泳ぎ準決勝で、13日に同50メートルを2連覇した立石諒(20=慶大)が、2分11秒09の1位で15日の決勝に進んだ。隣のコースで泳いだ五輪王者の北島康介(27)をラスト25メートルでかわし、予選に引き続きトップで通過した。

 立石が準決勝で北島との直接対決で勝った。最後の25メートルで隣のレーンを泳ぐ北島を逆転すると、そのままトップでゴール。「150メートル以降は、多少、余裕があった」と、最後は3位になった世界の北島を置き去りにした。

 日本男子平泳ぎの世代交代の大本命だ。13日の50メートル決勝でも、予選で日本新をマークした北島を抑えて2連覇を達成した。しかし、50メートルは五輪種目ではない。北島が五輪で連覇している200メートルで勝ってこそ、本当の世代交代といえる。「あすが楽しみ」と、決勝に向け手応えは十分だ。

 北京五輪代表を決める08年日本選手権の平泳ぎ200メートルで3位に終わり、代表入りを逃した。ショックで夜も眠れないほどだった。しかし、母校で湘南工大付高水泳部の堀川博美顧問の「あきらめるな」という激励で、何とか立ち直った。

 弱点は、その精神面の弱さだ。「康介さんを止めるには、まだまだ僕なんか」と謙虚に話す。しかし、メンタルとは対照的に、泳ぎはダイナミック。北島のコーチで、日本代表の平井伯昌ヘッドコーチが「高速水着じゃなくても、その影響をほとんど受けていない」と絶賛するスピードだ。

 3月には単身、米国カリフォルニアに渡った。民間クラブで約1カ月間、毎日7000~8000メートルを泳ぎ込んだ。「日本人は僕1人。それも、向こうでは自分でメニューを考えこなすのが普通」。英語もしゃべれない中で、弱点だった精神面を大きく鍛えた。

 生まれも育ちも湘南。通うのも慶応大環境情報学部の湘南キャンパスと、生粋の湘南ボーイだ。水泳より早く習い始めた電子オルガンの腕前はプロ級で、演奏するのは、もちろんサザンオールスターズ。大きく成長した湘南ボーイが「決勝は自信はないけど、負けるとは言わないです」。打倒北島の心に火が付いた。【吉松忠弘】