肉食系女子が、日本柔道の歴史を変える。柔道の世界選手権(9月9~13日、東京)で女子57キロ級代表の松本薫(22=フォーリーフジャパン)が、同階級の世界大会で日本史上初となる金メダルを目指す。日本女子代表は18日、北海道・釧路市での練習を公開。松本は世界大会でのメダル獲得経験はないが、今大会では首脳陣から金メダル経験者と並び、金候補として勘定されている。谷亮子の恩師も「野性の目をしている」と認め、生レバーが大好物の松本が新ヒロインとなる。

 2度目の世界選手権を目前に、乱取り中の松本の目は金メダルという「獲物」を追っていた。五輪、世界選手権での57キロ級は日本人女子柔道家にとって全階級で唯一金メダルを獲得していない鬼門。だがそれをも打ち破りそうな、たけだけしいオーラを発していた。

 雰囲気だけではなく、自他共に認める肉食系柔道家だ。幼少のころから谷を指導した帝京大の稲田監督は「野性味のある柔道をする。亮子も目に力はあったが、松本も目ぢからがあった。スカウトした時は『お前の目にほれた』と言った」と比較する。好きな食べ物は「生レバーです。焼き肉店では必ず注文します」と笑顔で肉食ぶりを披露する。

 1歩、畳の外に出れば天然系。代表選手会見で全選手が色紙に「好きな言葉」を一筆求められた時、松本は「空」と書いた。「好きな物を書くのかと思った」。ユル~い一面に会場は爆笑の渦につつまれた。

 昨年の世界選手権は、はらわたが煮えくり返る思いをした。メダル目前だったが準決勝で右手甲を骨折。激痛に耐えられず、敗れた。「ケガしても普通に勝てると思った」3位決定戦も14秒で敗退。園田監督の言葉は厳しかった。「(谷)亮子ならケガをしてもどう戦うか分かっている」。痛みでシャワーを浴びながら涙を流した。「ケガをしても対策を立てなかった。冷静じゃなかった」。無策の戦いを悔いた。

 それでも首脳陣の期待は大きい。世界大会の金メダル経験者である福見、中村、上野、塚田とともに、金メダルを計算している。園田監督は「当然、金メダルの勝負ができる。1回チャンピオンになって、その後の世界を見せてやりたい」と期待を言葉に込める。松本もそのつもりだ。「昨年は悔しい思いで終わった。今年は絶対に勝つ」。金メダルという最高のエサに食らいつく。【広重竜太郎】