日本のエースが、世界最速サーブの巨人を撃破して、日本を歴史的勝利に導く。男子テニスの国別対抗戦デ杯世界グループ1回戦、日本(世界17位)-クロアチア(同7位)が今日10日、兵庫・ブルボンビーンズドームで開幕する。9日に神戸市内で行われた抽選会で、世界ランク20位の錦織圭(22=フリー)は、初日第2試合で時速251キロの世界最速サーブを持つ身長208センチの同43位イボ・カロビッチ(32)との対戦が決定。強敵撃破で、デ杯通算100勝目、そして世界グループ(16カ国)初勝利の原動力になることを誓った。大会は3日間でシングルス4試合、ダブルス1試合を戦い、3勝した国が勝ちとなる。

 178センチの錦織が、思わずカロビッチを見上げた。カロビッチの肩に、錦織の頭がある。トップ100の選手の中では世界歴代最長身の208センチ。錦織との身長差は何と30センチだ。その高さからたたき込まれる251キロの世界最速サーブを持つ巨人に、錦織が燃えた。「リターンを入れてラリー戦に持ち込むのが僕の(持ち)味」。全豪で8強入りの要因ともなったスーパーリターンで、最速サーブをたたきつぶす。

 錦織の最速サーブは時速約200キロ。50キロのスピードの差はリターンで埋めるしかない。過去に対戦がなく、錦織にとっても、時速251キロは未知の世界。サービスエースを量産されるのは覚悟の上。それでも「そこで気を散らさないで引き締めて挑みたい」。1月の全豪の4回戦では昨年のツアー年間最多エース825本を記録した世界6位のツォンガを破った。超ど級のサーブに、錦織のリターンは大当たり。ツォンガに「どこにサーブを打っても返ってくる。あれじゃ勝てない」とまで言わせた。竹内映二代表監督も「圭は世界でも屈指のリターナー。リターンで勝機をつかむ」と期待を寄せる。

 地元開催のアドバンテージも大きい。会場のブルボンビーンズドームは、昨年7月に強敵ウズベキスタンを倒した験がいいコートだ。その時はバウンドしてからの球足が速めのハードコートだった。しかし、ビッグサーバーぞろいのクロアチア対策として、今年1月に表面を塗り替え球足を遅くした。サーブの勢いを殺し、錦織がリターンをしやすくした錦織スペシャルに生まれ変わった。会場は本来、防災センターのためコートの空調設備がない。そこにヒーター24台を入れて防寒対策を施した。それでもコート周辺は10度前後の気温だったが、その中で錦織は半袖、短パンで練習し気合を見せた。

 日の丸を背負う重みも力に変える。「国を背負うのも違ったやりがいがある」。錦織は代表戦でもめっぽう強い。ジュニア時代は27戦して2敗しかしていない。一般のデ杯でも7戦して1敗だけ。昨年9月のインド戦で2勝を挙げ、日本を27年ぶりに世界グループに引き上げる原動力となった。

 日本は過去81年、85年と2度だけ、世界グループで戦った。しかし、スウェーデンと米国相手に1試合も勝てずに完敗。錦織が勝てば、記念すべき日本男子世界グループ初勝利試合となる。また、1921年(大10)に初出場した日本が積み重ねたデ杯の勝利は99勝。今対戦に大台の100勝がかかる。「モチベーションも上がってきて、十分に勝てるチャンスがある」。頼もしいエースが、日本男子の歴史が動く世界の8強入りに燃えている。【吉松忠弘】