横綱朝青龍(28=高砂)が、出げいこで平幕に土俵にころがされた。秋場所(13日初日、両国国技館)を控えた2日、東京・墨田区の春日野部屋での連合げいこに参加。場所での初顔合わせが確実な東前頭筆頭栃ノ心(21)との三番げいこでは、上手投げで豪快に横転させられるなど、3勝3敗とふがいない結果に終わった。見学したNHK解説者で元小結の舞の海秀平氏は「厳しいな」と話し、見守った春日野親方(元関脇栃乃和歌)は「力がない。右肩下がり」と衰えを指摘。初場所以来4場所ぶり24回目の優勝へ、早くも大きな不安を露呈した。

 「クソ~、ア~!」。朝青龍の怒声が、けいこ場の張り詰めた空気の中に響いた。栃ノ心と真っ向勝負で連続6番取った。初戦で相手の得意とする右四つを許して寄り切られた。3番目もあっさりと土俵を割った。さらに5番目は相手の左上手から豪快に投げられた。左半身にはベットリと土が付いて、面目まるつぶれ。どちらが横綱なのか分からなかった。

 自己最高位の東前頭筆頭まで番付を上げた栃ノ心とは、秋場所での初顔合わせが確実。今回の朝青龍の出げいこは、場所前にその実力を確認する狙いもあった。さらに栃ノ心には名古屋場所前のけいこで土俵外につり出された苦い経験もある。その借りも返すつもりだったが、逆に返り討ちにあった。栃ノ心も「(朝青龍は)力、入ってなかった」と困惑したような顔で答えた。

 朝青龍は夏巡業中の先月中旬に、右ひざ内側側副靱帯(じんたい)を損傷して「全治4週間」と診断された。最近は左ひじや右肩に故障を抱えているが、ひざの大きな負傷は初めて。1日にも「万全じゃない」と話していた。ひざの故障と、けいこ不足による下半身の衰えは誰の目から見ても顕著だった。見学した舞の海氏も不安を口にした。

 舞の海氏

 ひざ、悪いんですね。(体は)小さくなった感じはないけど、張りが足りない。以前なら(土俵際まで)追い詰められても体を開いて何かするはずだったけど。(優勝は)厳しいな…と思いました。思うように動けていないんで真剣に取り組めば取り組むほど悔しいんじゃないですかね。

 けいこを見守った春日野親方のコメントはさらに厳しかった。

 春日野親方

 力、ないよな。(けいこも)付け焼き刃じゃあね…。力は誰でも落ちるけど、なだらかに落ちないと。急だよ。「右肩下がり」だもの。

 最後は珍名力士として名古屋場所を沸かせた「右肩上り」をもじった皮肉まで飛び出した。

 朝青龍もよほど悔しかったのか、ぶぜんとした表情を浮かべ、無言のまま車に乗り込んだ。秋場所千秋楽の今月27日には29歳になる。笑顔で20代最後の年を迎えられるか、状況は厳しい。【山田大介】