<大相撲春場所>◇初日◇14日◇大阪府立体育会館

 日本相撲協会が「朝青龍騒動」を全面謝罪した。暴行騒動の責任を取って元横綱朝青龍関(29=本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ)が2月に引退したことを受け、武蔵川理事長(62=元横綱三重ノ海)が「協会あいさつ」で異例の謝罪。「騒動を引き起こさないよう努めて参ります」と、再発防止を誓った。元朝青龍関は母国で言いたい放題だが、騒動続きだった協会のトップとしてファンに頭を下げた。

 予告通りの「謝罪」だった。十両の取組中にある、初日恒例の協会あいさつ。白鵬、日馬富士らの役力士とともに、紋付きはかまの武蔵川理事長が土俵に上がった。前日13日には「朝青龍騒動」についての文言を入れることを示唆。まずは「初日にあたり~」と毎場所恒例の文言を読み上げながら20秒後、再び息を整えた。

 武蔵川

 先般、横綱朝青龍が引退いたしました。大相撲を愛してくださっているすべての皆様には、多大なご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわび申し上げます。

 館内は「アサショーリュー」「三重ノ海、頑張れ~」のヤジ、冷やかしの声が飛んだ。同理事長は顔色ひとつ変えない。間髪入れず、再発防止を誓った。

 武蔵川

 今後は相撲協会一丸となり、1人1人が自覚を持って、騒動を引き起こさないように努めて参ります。

 その後は再び通常のあいさつ文で締め、最後は拍手の中で四方に頭を下げた。トータル90秒のけじめのあいさつ。同理事長の「謝罪文」は、就任直後の08年秋場所に直前の大麻騒動を謝って以来だった。

 初場所中に元朝青龍関が泥酔して暴行騒動を起こした。しかも相手が一般男性と分かり、2月4日には強制引退。当の本人は母国モンゴルで暴行を否定し、協会を批判した。不快感いっぱいの同理事長だが「言った通り。説明しないといけない」と土俵上からファンにわびた。

 近年、良くも悪くも元朝青龍関は主役だった。興行的には痛いヒール役の引退だ。今場所も場所前の売れ行きが伸びず、いまだに前売り券が完売した日はない。この日は空席もあったが、何とか満員御礼となり、同理事長は「ホッとしたね」と胸をなで下ろした。「多少の影響はあるかもしれないが、いい相撲を取っていればお客さんは来てくれる」。角界の合言葉は「ノーモア朝青龍」。「アイツがいれば…」と言わせないためには、土俵を盛り上げるしかない。【近間康隆】