大相撲の伊勢ケ浜部屋は4日、元幕内北青鵬の暴力問題で、当面の閉鎖となった旧宮城野部屋勢が合流してから初めて、東京・江東区の部屋で稽古を公開した。宮城野部屋で師匠を務めていた宮城野親方(39=元横綱白鵬)が、伊勢ケ浜部屋の部屋付き親方として、実際に指導している姿が公開されるのも4月に合流後初。同親方は稽古用の白まわしを締め、身ぶり手ぶりを交えて土俵周りで現役力士で指導した。

先場所、110年ぶりに新入幕優勝を果たした前頭尊富士にアドバイスを送ったり、新三役目前で同じ右四つの前頭熱海富士には実際に組み合ったりと、熱のこもった指導を続けた。部屋頭の横綱照ノ富士とも会話を交わすなど、旧宮城野部屋勢はもちろん、もともと伊勢ケ浜部屋所属だった力士にも、分け隔てなく声を懸けた。

稽古後、取材に応じた宮城野親方は「いい稽古していますよ。みんなで。それぞれがいいものを持っていますし。序ノ口、序二段、三段目、幕下、そして関取衆とね。伊勢ケ浜部屋だ、宮城野部屋だというのはなく。自分が知っているもの、身に着けているものを見せるということで、伝えたいなという気持ちで過ごしています」と、宮城野部屋時代にはほとんどなかった、まわし姿で指導する現状を説明した。

合流して約1カ月が経過する間には、申し合いにも参加していた。「そうですね。はい。(胸を)出しました。もう番付発表されましたから、番付発表前にちょっとね」と、恥ずかしそうに話した。これまで伊勢ケ浜部屋の稽古に立ち会って、参考になった部分を問われると「本当にいっぱいありますね。ありすぎて…。本当にありがたいです。今は指導を受ける側ですからね。自分が指導する立場ではないし…。ともに生活する、ともに頑張るというのが、言葉として合っているのかな」と語った。師匠ではなく、1歩後ろから見守る立場となったため、控えめに話した。

将来的には、宮城野部屋の再興の可能性は十分ある。当面の閉鎖を取り決めた日本相撲協会執行部も、金輪際の再興を認めないとまでは言及していない。それだけに宮城野親方は「部屋付き親方になって本当に、(師匠の伊勢ケ浜親方が元横綱旭富士で)同じ横綱というのもありますけど、30年近く部屋経営、部屋を支えた方ですからね。言葉は悪いけど、いろいろ盗んで学んでいきたい」と、今後も見据えて勉強の毎日だという。

朝稽古の後も、部屋に残って弟子とコミュニケーションを取る毎日を送っている。「みんなと一緒に掃除したりですかね。寝たり。両方の部屋のちゃんこを楽しんだり。若手もね、楽しんでいると思いますよ」。師匠だった時よりも、むしろ弟子たちと過ごす時間を大切にしている様子だ。

まわし姿で指導することについても「まあ(宮城野部屋の師匠時代も)時々していましたし、親方になってね、毎日着けることもなかったですから…。それまでは毎日着けていましたから。とにかく私はね、相撲が好きなんですよ。相撲が好きですから。ケガでやむなく引退したわけですし…。相撲を取りたい、相撲ともっとかかわりたいという気持ちがね」と、熱っぽく説明した。

夏場所(12日初日、東京・両国国技館)が目前に迫ってきたが「無駄にせず、成長して…。相撲協会、そしてファンの皆さんに、その姿を見せられればと思うね。その第1歩として、この夏場所ですね」と話した。力士だけではなく、自身も先場所からの成長を実感していた。