<大相撲秋場所>◇千秋楽◇25日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(26=宮城野)が、史上6人目となる20度目の優勝を飾った。連敗中だった大関日馬富士(27)を、豪快な上手投げで破って13勝2敗。すでに大関昇進を決め、前日14日目まで2敗で並んでいた関脇琴奨菊(27)が把瑠都(26)に敗れ、優勝決定戦までもつれることなく2場所ぶりに優勝した。

 「今場所は、できすぎだったかもしれないですね」。琴奨菊は、大関昇進を決めた今場所を、こう振り返った。千秋楽は、大関把瑠都に上手投げで敗れた。決定戦に持ち込めず、5年ぶりとなる日本人力士の優勝は夢に終わった。しかし14日目に昇進目安の12勝目を挙げ、戦いを終えたすがすがしさを漂わせた。

 先場所、終盤に体が硬くなり、平幕に連敗して昇進を逃した。精神面の弱さを克服しようと何でもやった。写経に取り組み、一流選手の本を読み、メンタルトレーニングも取り入れた。「今場所は勝ち負けに一喜一憂しなかった。メンタル面は成長したなと思います」。負けて帰る車中、ブルーハーツの「リンダリンダ」を歌って盛り上げてくれた付け人にも感謝した。福岡・柳川市から駆けつけた両親には、殊勲賞の賞金袋を手渡した。

 28日に臨時理事会の招集が決まり、大関昇進が承認される。琴欧洲、琴光喜は地方場所で昇進したため、先代が17年前に移転してきた千葉・松戸市の部屋に初めて、使者を迎える。大関への印象を問われた琴奨菊は「とてつもない地位。自分でも信じられない」と協会の看板といわれる重みを実感した。

 伝達式は、口上を述べる。佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「4文字熟語にこだわらなくてもいい。これから言葉を考えるでしょう」と本人に託した。4文字熟語にこだわりたい琴奨菊は「焼肉定食…。ハハハッ」と言って、報道陣を笑わせた。本場所中は封印していた冗談が、重圧から解き放たれて飛び出した。【佐々木一郎】