<大相撲初場所>◇5日目◇12日◇東京・両国国技館

 大関把瑠都(27=尾上)が東前頭筆頭の豪風(32)を押し出し5連勝を決めた。前日4日目、把瑠都が送り倒した若荒雄に巻き込まれ、頭を強打した三役格行司の木村庄三郎(61)も休場せずに土俵に上がり、把瑠都もひと安心。

 把瑠都は目の前の対戦相手に集中していた。前日、対戦相手とともに行司まで吹っ飛ばし、心配そうな表情を浮かべた姿はなかった。

 土俵下から見上げた視線の先に庄三郎がいた。ハプニングの影響を感じさせない仕事ぶりに心のつかえは取れた。取組はひやりとする場面もあり、直後は首をひねり苦笑い。「相手が何かやってくるのではと、緊張した。回り込まれても慌てなかった。あれで慌てたら下がっていた」と振り返った。

 初日からの5連勝は新大関の10年夏場所以来。3大関が序盤を5連勝でまとめたのは、07年夏場所以来、5年ぶりだ。

 取組前、東の支度部屋で庄三郎の訪問を受けた。「大丈夫だから」と声を掛けられると、笑顔で対応した。入場前の花道。行司が場内にアナウンスされ、沸き上がった拍手も耳に届いていた。家路につく前には「戻ってきてくれて良かった。行司も危ないんだよね」と心の底からの言葉が口をついて出た。

 庄三郎はさばいた後「朝に痛みや吐き気があったらと思ったが、なかったので『出ます』と言いました」と話した。周囲の休場を勧める声が届いても、誇りにかけて休まなかった。若荒雄にも「大丈夫だから。心配しないで頑張って」と声をかけている。巻き込んだ把瑠都と若荒雄の懸念を取り除きたかった。

 白星を5つ連ねるスタートに把瑠都は「1日1日、気合を入れて相撲を取っている」と言うが「内容は良くないけどね」と反省も忘れなかった。懸念を振り払う勝利で中盤、そして終盤へ勢いをつけた。【高橋悟史】