<大相撲初場所>◇7日目◇14日◇東京・両国国技館

 新大関の稀勢の里(25=鳴戸)が、さまざまな声援に応えて1敗を守った。新小結の若荒雄(27)を力強く突き落とし。出身地・茨城の母校から来た小中学生に加え、親交ある漫画家ちばてつや氏(73)が生観戦する中で6勝目。全勝キープした横綱白鵬(26)大関把瑠都(27)を1差で追う。

 勝負は一瞬だった。稀勢の里にとって、先場所12勝の新小結も「顔」じゃなかった。立ち合いすぐに、得意の左おっつけ一発で転がした。若荒雄の押してからの引き技を「怖がった。当たりが甘い」というが、今場所最速となる1秒4で決着。「タイミングがよかったんじゃないですか」。新大関の重圧がかかる15日間。体力の消費を最小限にとどめる意味でも、価値ある勝利だった。

 声援が力になった。母校・龍ケ崎市立松葉小と長山中の児童、生徒ら61人が応援に訪れた。横断幕が両校1本ずつ。松葉小は全児童289人を含む350人分の手形を押したものを掲げ、2階席から大きな声を送った。「いい声でしたね。あれだけ大きかったら聞こえる。うれしいですね」。“先輩”は場所中あまり見せない笑顔で感謝した。

 長山中では大関昇進を機に「稀勢の里資料館」の設立を進める。「今年11月2日で学校創立30周年。それに合わせてオープンしたい。教室をひとつ空けてます」と富永保校長(54)。大関昇進を決めた先場所中には、全校生徒312人の寄せ書きを福岡の宿舎に送付。すると学校に、稀勢の里からお礼の電話があった。「すごく律義で、いい青年」と富永校長。こちらも勝利に大喜びだった。

 「あしたのジョー」で知られるちば氏も観戦。「のたり松太郎」で角界を描くなど長年の好角家だ。招待された来月4日の大関昇進パーティーは海外渡航中のため、応援にやって来た。「日本人の優勝額がなくなったのが寂しい。稀勢の里関がぜひ額を飾ってほしい」。そんな期待の声にも、新大関は力強い内容で応えた。

 「体調もよさそうだし、いいんじゃないですか」と鳴戸親方(元前頭隆の鶴)も納得の表情だ。4日目の初黒星から再び3連勝。真価が問われる後半戦を前に、今場所の主役が勢いを増してきた。【大池和幸】