<大相撲春場所>◇4日目◇14日◇大阪府立体育会館

 綱とりに挑む大関把瑠都(27=尾上)は、関脇鶴竜(26)に寄り倒しで敗れ、早くも黒星を喫した。相手の速さに翻弄(ほんろう)され、常に後手に回った。

 把瑠都が左膝から崩れ落ちた。座り込んだまま視線が宙をさまよう。落とせない序盤で、鶴竜に屈した。花道を引き揚げる時は、前日のウインクから一変、思い切り顔をしかめた。東の支度部屋に戻り確認したVTRも、途中で見るのをやめた。綱とりへ向けて、大きすぎる序盤の黒星だった。

 立ち合いは突いて出た。4発目の左の突きが空を切った。「突き放せなかった」。鶴竜に回り込まれもろ差しを許す。形勢が悪くなると、力まかせになる悪い癖が出た。振り回され離れると、上体が浮いたところを再び潜り込まれ最後は押し切られた。「まわしはつかんだが胸を合わせていない。胸を合わせたら力が出るけど…。立ち合いで組みに行ったほうが良かったかな。離れる相撲は得意じゃない」と努めて冷静に振り返った。

 場所前、警戒する相手の1人に鶴竜の名前を挙げていた。「スピードがあり、テクニックもある」。苦手なタイプと分かっていながら、終始主導権を奪われた。「まずは動きを止めたい」と対策を練っていたにもかかわらず、前日までの豪快な相撲は影を潜めた。

 北の湖理事長(元横綱)は「大きな一番。前半の1敗は後々大きく響く。(今後を)左右する1敗」と厳しい口調だ。鏡山審判部長(元関脇多賀竜)も「鶴竜の流れだった。理事長もレベルの高い優勝を求めている。上位陣との対戦が残っているし厳しい」と分析した。

 3日目までを難なく乗り切ったが、4日目は熱戦をものに出来なかった。期待がしぼんだが、ついえたわけではない。「また、明日から頑張ります」と最後は必死に気持ちを切り替えた。横綱へ求められるのは精神力の強さ。今日5日目も崩れるようなら可能性は限りなく低くなる。負けられない残り11日間で、心技体すべての強さを見せるしかない。【高橋悟史】