<大相撲春場所>◇6日目◇16日◇大阪府立体育会館

 2年ぶりの春場所は、ご当地力士が盛り上げる。大阪・寝屋川市出身の西前頭6枚目の豪栄道(25=境川)が、東前頭5枚目の若荒雄(28)を下して4勝目。ここまで大阪出身力士に渡らなかった吉本興業からの懸賞を、三度目の正直でゲットした。

 スピード豊かな豪栄道らしい速攻相撲だった。すぐに右を差し、左脇もしぼって一気に前へ。わずか3秒1の電車道だった。「今日はよかった。立ち合いに当たり勝って中に入れた。あとは出るだけ」。ありがたく3本の懸賞を獲得。その中には吉本興業からの2本が含まれていた。

 春場所担当部長の貴乃花親方(元横綱)が橋渡し役となり、今場所は大阪出身の豪栄道と勢に、毎日交互に吉本から懸賞がかけられている。ここまでは勝敗の妙で、その2力士に渡らずじまい。豪栄道は「やっと取れた。三度目の正直ですね」と満面の笑みだ。

 「やっぱり小さい時からお笑いが身近にあった。大きな会社が自分の相撲に懸賞をかけてくれるのはありがたい」と感謝した。高校から家族と離れて東京に住むが、今もコテコテの関西弁だ。小学校時代は帰宅すると吉本新喜劇を見てから相撲道場に通ったという。貴乃花親方のような新喜劇デビューは「顔じゃないですよ」と笑うが「辻本さん、面白いですよね」。“茂造じいさん”のキャラクターで有名な辻本茂雄座長(47)がお気に入り芸人だ。

 今場所前、東京で捨て猫を拾った。今は大阪の実家に預けてある。動物好きで、実家には他にも猫2匹、犬が1匹いる。ナナと名付けた新たな家族はまだ生まれたばかり。場所中も母親から写真付きメールを送ってもらい、成長を楽しんでいる。「ほら、招き猫っていうからね」。白星を着実に招いてくれている。

 八百長問題で昨年の大阪場所は中止。2年前の春は途中休場した豪栄道だけに「大阪で相撲を取れるのがうれしい」と気合が入っている。三役経験5場所の実力者は、脇役でくすぶってるわけにはいかない。来年はどのくらいで戻ってきたいか?

 「う~ん、150キロくらいかな」。聞かれていない体重で返すボケ。芸人さながらのオチをつけるあたりは、やはり大阪人の血が流れている。【大池和幸】