<大相撲名古屋場所>◇11日目◇17日◇愛知県体育館
元アマ横綱で西十両13枚目の遠藤(22=追手風)が、同7枚目の大喜鵬(24)を突き倒しで破り10勝目を挙げた。所要2場所で昇進した新十両場所で、高い能力を発揮。優勝争いも2差リードを保ち、昨年初場所の千代大龍以来の新十両Vが見えてきた。さらに所要3場所での史上最速入幕へ、期待も膨らむ。
しなやかで、力強い。遠藤が、幕内経験者の大喜鵬を圧倒した。立ち合いで踏み込み、相手の出足を止める。体勢を入れ替えながら突きに転じると、たった2発で突き倒した。対戦を熱望していた日大時代の1年先輩を問題にせず、新十両場所で10勝目に一番乗り。地元石川から観戦に来ていた祖父勇さん(72)にも勇姿を見せつけた。
遠藤
あっちの方が強いですから。割り切ってました。(大喜鵬とは)2年ぶりだけど、あのころより少しは強くなりましたと、伝えられればいいなと思って臨みました。
待望の怪物候補だ。日大時代には11タイトルを獲得した元アマ横綱。史上最速に並ぶ所要2場所で関取になっても適度に肩の力は抜けている。「何勝しているんだか覚えてないんです。1敗したのは覚えてるけど。相撲だけに集中できている」と笑う。部屋に帰ると、まとめ買いしたチョコレートを食べるのが日課だ。
相撲を始めた小学生のころは「闘争心むきだしだったのがすごい」と朝青龍にあこがれた。中学時代からは周囲に「貴乃花に似ている」と言われ出した。現役時代のDVDを何度も見た影響からか、貴乃花親方(元横綱)のように、突き放して体勢優位になってから四つに組んで攻める形が目立つ。「似てるなんてとんでもない」と恐縮するが、取り口の安定感は抜群だ。
かつて所要2場所で十両昇進した親方衆も、能力を絶賛する。高砂親方(元大関朝潮)は「膝を曲げて重心が低いのがいい」。二子山親方(元大関雅山)は「真っ向勝負で気持ちの強さが出ている」。藤島親方(元大関武双山)も「幕内でも通用する。マスクもいいし、スター性もある」と話した。
14勝での優勝ならば、史上最速所要3場所で新入幕の可能性もある。「まだ早いと思います。あと4日あるし」。期待は高まる。【木村有三】<遠藤アラカルト>
◆生まれ
1990年(平2)10月19日、石川県穴水町生まれ。本名同じ。
◆経歴
金沢学院東高から日大。獲得タイトルは11。今年春場所、幕下10枚目格付け出しでデビュー。
◆きっかけ
小1のとき、父吉樹さんに「好きなドライブに連れて行ってやる」と言われて、たどり着いた先が相撲場。無理やりやらされて最初は嫌いだったが、朝青龍を見て好きに。
◆プロ入り
昨年大みそかの午後11時59分すぎ、実家で年越しそばを食べながらテレビを見ていた際、年内に進路を決めると言ったことを思い出して、両親に「大相撲に行くよ。挑戦してみる」と宣言した。
◆同郷
同じ石川生まれで日大出身の元横綱輪島を尊敬する。「学生時代に遠目で見たことはあるけど、話したことはない」。
◆好み
チョコレート。プロ野球は巨人ファン。色はピンク。
◆海
実家は海に面し、祖父勇さんとよく沖まで釣りに出かけていた。「アジやメバルがよく釣れた」。
◆家族
父吉樹さん、母玲子さん、妹亜美さん。
◆サイズ
184センチ、143キロ。
◆所要場所
費やした場所数のこと。遠藤の場合は、デビューした春場所と続く夏場所の2場所を幕下で経験。3場所目の今場所に新十両昇進を果たしたため「所要2場所」となる。もし、名古屋場所後に幕内昇進を果たせば、史上最速の「所要3場所」となる。