<イースタンリーグ:ヤクルト11-6ロッテ>◇24日◇戸田

ロッテの21年ドラフト1位で高卒2年目の松川虎生捕手(19=市和歌山)の動きをじっくり見させてもらった。

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ようやく生の試合で松川捕手を見られる。1年目の糸満キャンプ、ブルペンでのキャッチングを見て以来、なかなかタイミングが合わずにいた。ファームで見るとは思わなかったが、試合でどんな動きをするのか集中して見守った。

戸田球場は右翼から左翼へ風が強く、左打者の外角への投球が要注意だったが、ロッテバッテリーはヤクルトの左打者に2本、右打者に1本、いずれも左翼へホームランを許した。

両チーム合わせて5本塁打は、すべて左翼だった。特に、左打者の外角への攻め方には気を配る必要があったが、両チーム捕手のそうした部分での観察力はもっとあっていいと感じた。

強風は気になったが、それ以上に捕手松川に神経を集めた。私は試合全体を俯瞰(ふかん)して見る時もあれば、投手に焦点を集めたり、ショートの打球判断の1歩目に注目したり、その時々である程度狙いを持って見ている。

この試合は、何と言っても捕手松川。そして、捕手を見る時の私は、やはり長年捕手一筋でやってきた経験を元に、サイン交換から、ミットの構え、キャッチング、ピッチャーへの返球、そしてサイン交換というサイクルでじっくり観察する。

中でもキャッチングには、大いにこだわっている。構えたところにサイン通りのボールが来ることもあれば、逆球もある。そんな時にどう反応して受けるか。ミット音ばかりではなく、ボールを止めるという動作に特化して見る。

松川のキャッチングにわずかな感覚のズレを覚えた。キャッチングしてから返球するまでの動きに、私は自分のイメージをかぶせる。そこに、少しばかりの誤差がある。私の感覚が正解ではない。見る人によって、感覚は異なる。そこは承知した上で指摘したい。

松川のキャッチング、特にボール球だった時、キャッチングから返球への動作に、もっと細やかさがほしい。言葉にするのはものすごく難しいが、あえて言うなら、外れたボール球でも「次は来いよ」とピッチャーを鼓舞するような、乗せていくようなしぐさ、ちょっとした「間」が足りない気がした。

松川のサインに意図を感じた投球がボール球になっても、そこはより丁寧に捕球し、大切に返球してほしい。雑に返球しているとは感じなかったが、もっと「あと少しだぞ」「ボール半個だぞ」などの思いがピッチャーに伝わるようなキャッチングであってほしい。

高卒2年目の捕手に、高度なことを要求すると思われるファンの方もいるかもしれないが、ここは私も捕手としての繊細かつこだわる部分として、言葉を尽くして説明したい。

昨年、高卒ルーキー捕手として松川の活躍をずっとテレビなどで見てきた。佐々木朗希とのバッテリーで完全試合を達成し、歴史的な1歩を1年目でしるしている。今季、ファームでのプレーが続くが、昨年の1軍での活躍を別物としてとらえていない。

2年目は、さらに自分のワンプレーにこだわって、質を高めてほしい。何げないボール球の捕球、ピッチャーへの返球でも、そこにはいろんなメッセージが隠されている。

仮に、雑なキャッチングからの返球だとピッチャーが感じれば、そんなわずかなところから、信頼関係にひびが入る。なお、右打者の外角はしっかり捕球していた。この捕球を常時実践してほしい。

それだけ捕手の止めるという作業は奥も深く、ピッチャーに与える影響も大きい。少なくとも、私のイメージと、実際に見た松川の動きに、ズレがあるのは気になる部分だった。

それが私の思い過ごしであれば、一笑に付していただいて構わない。だが、キャッチングと向き合ってきた私も、いいかげんな解説をする緩みはないと申し上げておきたい。

昨年、スポーツニュースで見る松川は、ほとんどが勝負球にまつわる場面だった。ファームを中心に解説する私は生で松川を見たかったが、残念ながらこの試合が初めてという経緯だった。

昨年の経験を踏まえての2年目として、今はファームで試合に出場する日々だがキャッチング、ブロッキング、スローイング、リードは、必ず試合の中で成長できる。ボール球を止める動きひとつでも、極めるのは至難の業だ。動作ひとつひとつにこれからも注目したい。

最後に、ロッテ先発の21年育成1位・田中楓基(ふうき)投手(19=旭川実)のピッチングが光った。最速152キロでいい真っすぐだった。さらに真っすぐと同じ腕の振りでスライダー、フォークのキレも素晴らしかった。もっと見たかったが、投手ライナーが直撃して降板したのは残念だった。

腕の振りは、左右の違いはあるが、この日登板したヤクルト高橋奎と比較しても劣らないレベルだった。今後が非常に楽しみなピッチャーだ。(日刊スポーツ評論家)