「中日タイガース」の陰口に負けるな、と書いたのは7月1日だ。指揮官・矢野燿大体制の2年目を前に阪神は打撃コーチに井上一樹を招き、山本昌に秋季、春季キャンプの臨時投手コーチを依頼するなど中日の有名OBの力に頼った。

何より指揮官・矢野燿大が中日でプロ生活のスタートを切っている。それもあって中日色が濃くなったことに一部OBやメディアから、その“陰口”がささやかれた。そんな状況で中日に負け越すようでは-と意地悪なことを書いたのだ。

残り試合数もカウントダウンに入ってきた今季、阪神はまず中日との対戦を終えた。地元・甲子園で3連勝フィニッシュ。3年ぶりに中日戦の勝ち越しを決めた。

「僕は選手にとって何が一番いいのか、というところで判断させてもらっています。中日色が濃いって、なんでそんなことにこだわるのかな、と思います」。直接、矢野自身に“陰口”について問うたときに苦笑を浮かべながら答えた。

7月頭の頃はシーズンが始まったばかりで阪神、中日は最下位争いをしていた。その状況を思えば巨人に独走を許したとはいえ、両球団はそれなりには頑張ったと言えるかもしれない。

昨年の2月、中日の北谷キャンプで新しく指揮を執ることになった与田剛と少し雑談したことを思い出す。バッテリーを組んだこともある矢野との“対決”について与田はこんな話をしてくれた。

「テル(矢野)とバッテリー対決ねえ。確かに。ドラゴンズで言えば星野(仙一)さんと木俣(達彦)さんが監督同士で対決するような感じかな? でも自分たちがプレーするわけではないので。やりたいこととやれることが違うこともあるし。我慢が大事でしょう。簡単じゃないです」

ともに指揮を執って2年目となった2人の監督が、現在、ゲーム差なしで2、3位になっている。クライマックスシリーズがあれば結構、面白かったのになと、つい思ってしまう。

以前にも書いたが中日が褒められるのは巨人に善戦したことだ。勝負の世界に「たられば」はないけれど、もしも阪神が中日と同じぐらい巨人に対して戦っていれば、もう少し違う結果になっていたかもしれない。いずれにしても、ともに来季は勝負の3年目だ。「バッテリー」でそろって巨人を苦しめてくれれば、と思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)