1月4日は星野仙一の命日だ。18年のことなのであれから丸3年だ。時がたつのは早い。そんな思いで「珈琲館 尾賀」(神戸市東灘区)のドアを開けた。闘将が芦屋に住んだ阪神監督時代、足しげく通った店だ。好んで食べたモーニングセットをお願いする。

そこに知った顔が訪れた。筒井壮。阪神の外野守備兼走塁コーチ、今季からはそこに「分析担当」という肩書も加わった。知らない人もいるかもしれないが筒井は星野の姉の息子、つまり、おいっ子だ。昨年の同日、店に誘ってから1人でも訪れているという。

コロナ禍でもあり、普段とは違って遠慮で済ませたいところ。しかし顔を合わせてしまえば星野の思い出話、さらに野球の話になっていく。少し疑問だった「分析担当コーチって?」と聞いてみた。

「あまり言えませんけれど。僕の立場から言えば、まあ盗塁面でしょうね」

言葉少ない筒井だが狙いは明確だ。筒井は指揮官・矢野燿大の2軍監督時代から2軍で一塁ベースコーチを務めた。そこで相手投手のクセを研究、盗塁に生かした。その結果が18年にファームでマークしたシーズン163盗塁というとんでもない数字だ。その足攻もあってファーム日本一にも輝いている。

そして19年、1軍監督となった矢野とともに1軍へ。「ファームと同じように頼む」という矢野の依頼を受け、シーズン100盗塁到達に貢献した。この年、リーグで3桁到達は阪神だけ。大台に乗ったこと自体、闘将の下でリーグ優勝を果たした03年以来だった。

昨季はコロナ禍で試合数が120になった。それでもチーム盗塁数80個をマーク。これは巨人と並んでのリーグトップだ。それでも筒井には誇れるものがある。盗塁者数である。

「巨人は盗塁をした選手は16人。ウチは近本を筆頭に23人が走りました。サンズもボーアも盗塁してますから。そういうところですね」。矢野が理想にする全員野球はこの部分にもあるのだろう。油断すれば誰でも走ってくる。そんないやらしさを武器にしたい。

「オジさんは選手が勝手に走ることは好きじゃなかったですね」。星野の意思を受け継ぎ、盗塁、走塁、それに伴う分析担当と自身の責任を明確にする筒井にとっても勝負の3年目だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)