いっつもそんな感じで投げたらエエんちゃうん。オリンピック(五輪)中継ではなく、阪神戦で藤浪晋太郎の投球を見た虎党の多くはそう思ったのではないか。高浜卓也、鳥谷敬と“元猛虎戦士”に打たれる不思議さを見せたものの終始、リラックスした様子でスイスイ。これならイケると思わせた。

後半戦、藤浪は先発スタッフに戻る可能性がある。この内容なら十分、考えられる選択肢だ。何より首位を走る今季、開幕投手を務めた男である。回り道をしているが再び、いや何度目か分からないが次こそチャンスをものにしてほしい。

この日、投げ合ったのはロッテ佐々木朗希だった。ともに190センチオーバー、長い手足に投手の華がある存在だ。佐々木で思い出すのは、本人には申し訳ないけれど、19年、大船渡高3年時の“騒動”だ。

エース佐々木の好投で決勝まで駒を進めた同校だったが、監督が佐々木の故障を危惧し、大一番で登板を回避。結局、同校は敗退し、当時、その判断を巡って議論が噴出した。

12年夏に大阪桐蔭のエースとして連投し、甲子園春夏連覇の偉業を達成した藤浪とは対照的だった。佐々木の一件が起こったとき、思ったのは藤浪は当時、どう考えていたのかということだ。佐々木自身や同監督の判断への論評ということではなく、藤浪自身はどういうつもりで投げ続けていたのだろう。

「そりゃあ将来のことがまったく気にならないということはなかったですけど。それより甲子園で勝ちたいという気持ちが強かったですよ。『ここで肩がぶっ壊れてもいい』と思って投げてましたもん」

2年前の話だが藤浪はしっかりとそう答えた。地元出身、甲子園のスターという要素以上に自身の宿命を受け入れる覚悟。それを聞けば、古くさい人間としては、こんな男にはプロでも阪神でも頑張ってほしいと願うしかない。制球難を乗り越え、藤浪が再びマウンドで輝くのは阪神の優勝に必要な要素だろう。

それにしてもエキシビションなのがもったいなかった。佐藤輝明が2アーチ、大山悠輔も1発と攻撃面では最高の結果が出た。そして藤浪と佐々木朗希の投げ合い。佐々木もスーパースターになってほしい。やっぱり、エエなあ、プロ野球。公式戦再開を今から待っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)