底知れぬスター性である。阪神の試合があるときは連日、お届けしているこのコラム。内容は最初から決めているワケではなく(当たり前だが)展開を見ながら「何を書こうかな」と考える。この日、8回裏まで頭にあったのは、こういう感じだった。
『野手では佐藤輝明だけ音なし。でも東京ドームではみな、打つ。テルは甲子園で打ってくれ』-。試合前まで巨人戦で3本塁打を放っていた佐藤だがすべて甲子園でのアーチ。本塁打が出やすいとされる東京ドームでは不発だった。
思い出していたのはレジェンドOB・金本知憲のことだ。彼も、なぜか東京ドームではあまり本塁打を打たなかった記憶がある。さらに言えば、野手みんなが打っているときはあまり打たない傾向もあった。
それと同じか…と思っていた9回表だ。5打席目にダメ押し24号2ランではないか。しかも賞金100万円付の看板弾だ。最後のひと働きで2本放ったキング・森下翔太が候補だった日刊スポーツの1面をもさらっていったのである。
内幕を書けば佐藤自身は「きょうはオレちゃうでしょ」と思っていたフシがある。虎番記者に囲まれながらドーム内の階段を足早に上がり、最低限の受け答え。試合によっては足を止め、話すのだが、この日はさっさとすませた。その様子からそんな自負を感じる。
それにしても、だ。詳しくは虎番記者が書いている試合前、少年とのやりとりのエピソードを読んでいただきたいのだが兵庫県から観戦に来た少年から手紙をもらい、お返しに手袋を渡した佐藤の話である。
球場の構造的にベンチからモノを渡すのは難しい。と言って選手がわざわざそこに近寄っては目立ち過ぎる。そこで佐藤はベンチ横のスペースでボーッとしていた私に「渡してもらっていいですか?」と丁寧に頼み、手袋を託してきた。
なんとも風格ある態度ではないか。こちらは「あっ。はいはい」と受け取り、少年に渡させてもらった。こういう結果になると、そのやりとりを含めたすべてが「スターやのう」という感じなのである。
主役たちが活躍した阪神は大事な3連戦の初戦を圧勝。首位固めに弾みをつける気配だ。それにしても100万円か。推定年俸5億円の100万円は年収500万円なら1万円。関係ないけど「う~ん。そうか~」という感じである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




