怪物ルーキーが、あこがれの神宮を楽しんだ。全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)西東京大会で、ラグビー・ヤマハ発動機の清宮克幸監督(48)の長男、早実・清宮幸太郎内野手(1年)が、八王子学園八王子戦に「3番一塁」として神宮球場での公式戦に初出場し、3打数1安打をマーク。4試合連続安打で4年ぶり4強を決め、明日24日の準決勝で日大三と対戦する。この日2打席連続本塁打を放った日大三・川崎拳士朗内野手(3年)との怪物対決が実現する。

 夕日が沈みかけた神宮で、清宮の心が躍った。4強入りを決めた瞬間、「よっしゃー! やったー!」と跳びはねて喜んだ。三塁側スタンドでは父が見守り、今大会最多の1万3000人が詰めかける中で4試合連続安打。「小さい頃から早大の試合をよく見に来ていた舞台で、もちろん高ぶるものはあった。きれいでしたね。いい財産になりました」と笑顔を見せた。

 打席では普段と変わらず動じなかった。この夏初めて内角攻めにあって2死球を受けても「全然、気づかなかった」と苦笑い。6回の第4打席は内角の際どい球をファウルで対応し、6球目の外角低めの変化球を右手1本で中前に運んだ。見逃せばボールかというコースで「あれは打っちゃダメ。点につながったのは良かったですけど」と反省した。今春のデビューから34打席連続で三振なし。夏1号は出なくても、天性のバットコントロールで観客を沸かせた。

 周囲の盛り上がりも、どこ吹く風だ。ファンとの接触を避け、正面玄関前にバスを乗りつけて午後1時19分に球場入り。約1時間後には東京都高野連の運営担当4人と球場スタッフに囲まれ、従業員室を通ってウオーミングアップに向かった。準備運動を行ったのは、立ち入り禁止エリアに仕切った左翼席裏の通路。異例の対応にも「試合を見に来たときに通る売店の前でやったので、不思議な感じでした」と笑った。

 内野席はほぼ埋まり、強烈な日差しを避けられる2階席は試合開始1時間前に満席になった。スタメン発表で「3番、ファースト、清宮君」とアナウンスされると、歓声と拍手が起こった。報道陣も34社121人が集まり、20日の5回戦と比較しても2倍以上。「注目されるのはうれしい。お客さんは、もっと入ってもらっていいです」と“お願い”も飛び出した。

 準決勝の相手は日大三。最大の難敵を前にしても「自分たちの野球をすれば負ける相手はいない。神宮は打球がよく飛ぶので、ヒットの延長が入ってくれるかな」と言ってのけた。甲子園まで、あと2つ。ホームランがないまま、夏を終わらせるわけにはいかない。【鹿野雄太】