茨城県有数の進学校、日立一が、85年以来30年ぶりの決勝進出を果たした。背番号3の鈴木彩斗投手(2年)が、6安打6奪三振1四球の126球完封勝利を披露した。30年ぶり2度目の甲子園をかけて、今日23日、昨夏の準優勝校霞ケ浦と対戦する。

 鈴木彩、こん身の126球目が二飛になった。勝った。ゲームセットの瞬間、グラウンドのナインも、満員の三塁側スタンドも、そろって「よっしゃ。決勝だ~」と叫んだ。ついに決勝に進出した。30年分の興奮と喜びを爆発させた。

 歓喜の中心にいたのが鈴木彩だった。「ストレートとカーブ、スライダーが良かった」と、緩急をうまく使ったピッチングを振り返った。ストライク先行を意識して、制球がさえていたカーブでカウントを整えた。決め球のスライダーは大事な場面で低めに投げ込み、三振を奪う。「今日は、ランナーを出してもホームにかえさなかったので80点以上はあげられます」と満面の笑みで答えれば、中山顕監督(44)も鈴木の投球について「上出来です。100点をあげても良いくらいです」と息もぴったり。

 快挙の裏で、鈴木彩はケガとも闘っていた。今年のオフシーズンの練習中にボールが顔面を直撃し、頬骨が陥没骨折した。今も目の下には補助の金属プレートが入っている。鈴木彩は「けがをしていても、今できることをする」と体重を増やすトレーニングを黙々とこなした。

 日立一野球部に興味を持ち始めたのは小学生の時。夕方に学校の前を必死にランニングしている日立一の野球部員に憧れたのがきっかけだった。母美佐子さんの「野球だけではなく勉強も」という考えのもとで中学時代は野球部のエースとして全国大会に出場しながらも学校成績で常に1桁の順位をキープし、難関日立一の門をたたいた。

 中山監督は「30年前に日立一が甲子園に出場した時、テレビで試合を見て感動した。その感動をぜひ多くの人に届けたい」と話した。監督の思いとともに、鈴木彩の大一番が始まる。【倉田祥太】