秋田商が龍谷(佐賀)に勝利し、16強に一番乗りした。1-1の8回裏2死一、三塁に工藤慶捕手(3年)の中前打で勝ち越し。さらに主将の会田海都中堅手(3年)の右前打でリードを広げ、16奪三振1失点と好投した左腕エース成田翔(かける=3年)を援護した。3回戦は第11日第1試合(相手校は未定)に決まった。

 秋田商が12年以来、3年ぶりの校歌を甲子園に響かせた。翌13年は東北勢5校が初戦突破する中、大トリで富山第一に0-5で敗退。当時1年生だった草■輝也内野手(3年)は「あの悔しさはもう味わいたくない。とにかく勝てて良かった」と、1勝の重みをかみしめた。

 初回に1点を先制も、5回に追いつかれ、6、7回と満塁の好機をつぶした。そんな嫌なムードが漂う中、8回の攻撃前には太田直監督(36)が「3年生が決めろ」と声をかけた。レギュラー9人中2年生が5人。試合を決めたのは3年生の意地だった。

 8回2死一、三塁。「ここで打つんだ、絶対ここで打つんだ」。祈りながら工藤がチェンジアップをバットの先で捉え、中前にはじき返した。「キャッチャーとして、翔(かける)のために打たなきゃ、と思った」。マウンドで好投を続けるエース成田にようやく、大きな1点をプレゼントした。

 1年前に味わった悔しさを忘れないよう、工藤の帽子のつばには「本気 昨年の分も」と書いてある。昨夏の秋田大会、西目との3回戦。1点を追う9回2死一、二塁で工藤に打席が回り、遊ゴロで最後の打者となった。「先輩たちの夏を終わらせてしまった」。以来、チャンスの場面を頭に思い浮かべて打撃練習に取り組んできた。イメージ通りの一打に「やってきて良かった」と笑顔で汗をぬぐった。

 なお2死一、二塁のチャンスで、主将の会田も右前適時打で続いた。この日が18歳の誕生日。前夜にはチームメートから「明日打たないとプレゼントあげないぞ」とハッパをかけられていた。2安打1打点2盗塁。1-1の5回表2死二塁の守備では、センター前に飛んできた打球に飛び込むスーパーキャッチと、文句なしの活躍だ。「今までで一番印象深い誕生日になりました」とうれしそうに話した。

 秋田勢は、10年まで夏の甲子園ワーストタイの初戦13連敗。以来、県高野連の主導で続けてきた強化プロジェクトも今年が最終年となる。県で、第1回大会準優勝のレジェンド校・秋田の19度に次ぐ、18度の出場回数を誇る秋田商が、意地の大きな1勝を挙げた。【高場泉穂】

※■は弓ヘンに前の旧字の下に刀